パイプスモーキングの醍醐味は様々な個性のtobaccoの味わいが楽しめることです。
あまりに種類が多く、味わいや特徴が忘却の彼方に消えてしまったものも多々あり
自分の備忘録のためにテイスティングノートをつけ始めました。

パイプ葉は個人の嗜好性や飲み物、時間帯、体調、パイプによってもかなり変わります。
なるべく主観に流れないように書くよう注意は払っているつもりですが、あくまでも参考程度にされてください。お役に立てれば幸いです。
ついでにシガーやRYO、ウイスキーについても少し触れています。

2014年8月31日日曜日

Rattray's Marlin Flake



ラットレー・マーリンフレーク
バージニア、ブラックキャベンディッシュ、ペリク
原産国:ドイツ


ラットレーのBlack Mallory(ブラックマロリー)を常喫葉のひとつにしている。本当に素晴らしいtobaccoだ。
Marlin Flake(マーリンフレーク)はそのラットレーで最も人気のある葉と言われる。

ラットレーは元々スコットランドのブランドだったが、今はドイツのtobacco会社(コールハス)のブランドだ。レシピそのものは受け継がれておりイギリスタバコそのものだ。

葉様はフレークだが、シート状になっているのではなく、荒い帯状のフレークが折りたたまれている感じ。

 開封すると、レーズンに似た甘いドライフルーツの香りが漂う。着香はされていない。

一般的なシート状フレークと違い、ボウルに詰める分を目分量で取り出す。するとほろほろとほどけていわゆる「レディラブド」に近い状態になる。 (ブロークンフレークと呼ぶそうだ)

これをなるべく崩さないようにまとめ、折り曲げてボウルに詰めるのだが、フレークは詰め方の加減も難しく、ミクスチュアのように一筋縄では行かないところがある。自信がない時は少し手間暇はかかるが乾燥時間をかける代わりにキューブカット状にしてしまってもいい。すると詰めの調整にさほど神経を使わなくても火持ち良くスロースモーキングが可能だ。

火付きは良い。火持ちは良い方ではないが詰め方と乾燥次第で良くなる。マーリンフレークに限ったことではないが火持ちを良くするための事前の乾燥は必要だ。乾燥しすぎれば風味を損なうので加減がいる。目安は30分程度。



フレークをフレークのまま喫う利点は、そのスロースモーキングにある。極力スロースモークを心がければ、爽やかで透明感のある甘さと熟成感たっぷりのアロマを圧倒的長時間、しかも最後まで楽しめる。コツはドロー(喫い)よりもブロー(吹き)を意識すること。息圧はほとんどいらない。消えかかったら軽くタンピング、ボウルのトップを指で半分塞いでドロウする。

序盤、バージニアらしい甘さとペリク特有のやや刺激のあるアロマがこのtobaccoの深い味わいを予感させる。透明感のある甘さが心地よい。
中盤はややコクが増してアロマが強くなってくる。暖かみのあるややクセのあるアロマは、秋晴れの日当たりの良い乾いた松林の木陰にいるような香りがする。
松脂の芳香と、かすかな腐葉土の香りが風にのってやってくる。
終盤はその色がぐっと深くなり、夕日と共に終了する。
この乾いた太陽の香りは主にペリクのアクセントによるものと思われる。

ペリクとは、タバコ葉の古漬けのようなものでコクと酸味を強調しアロマを深くしてくれる。キャベンディッシュも実はタバコ葉の漬物なのだが、両者は製法や葉の選定、熟成(発酵)の仕方の違いで分けられ風味も全く違う。詳しい説明は割愛するが、キャベンディッシュは時に「ケーシング」といって着香の工程として語られる事がある。イギリス式のキャベンディッシュにはそれはない。ただ喫味のコクやまろやかさを引き出すためには欠かせないパイプ葉の基本的熟成加工法だ。ブランドによっていろんなアプローチがなされる。だからキャベンディッシュと一言で言っても様々な味、アロマになる。
ペリクはそれよりももっと厳密に製法が定義されており、そのアロマや風味は一度でもペリクを味わった事があればそれとすぐ分かるものだ。もっともオリジナルとされるペリクはアメリカの特定の産地や製造地で限定されており、実際のところ本物のペリクに出会うことはそうそうあることではない。また単独で使われることもなくブレンド葉として使用する。

マーリンフレークにブレンドされているペリクもオリジナルではなく、製法を守った上での「ペリク」であろう。使用量もそう多くはない。ただそれが全体の喫味に個性を与えていることだけは確かで、バージニアの甘みの奥に広がる柔らかい酸味と爽やかなコクで判別できる。またアロマにはナッツを焦がしたような香ばしさが加わる。

マーリンフレークはとても上品なフレークだ。飽きの来ない穏やかな甘さの喫味は日々のtobaccoとしては申し分ない。
ただ、国内販売のそれはキャラクターに比してちょっと価格が張りすぎるのが難点で常喫tobaccoとしてはおすすめとは言い難い。
個人的にはサミュエルガーウィスのフルヴァージニアやダンヒルフレークの方が気軽に常喫できるし、もしもペリクが欲しい時は他にも選択肢はいろいろある。


もちろん値段のことを除けばとても良いtobaccoだ。葉の見た目に反してとてもあっさりした喫味が持ち味、飽きの来ないアロマが好感が持てる。
ただし舌荒れはかなりのスロースモーキングでも可能性は高い。
それ以外は全てマイルドでニコチン酔いの心配もいらない。
時間帯はデイタイム、合う飲み物はコーヒー、水など。

2250円/50g(2014)



  1. 生葉芳香 弱←○○○○○★○○○→強
  2. 甘  み 少←○○○○○○★○○→多
  3. 味の濃淡 淡←○○○○★○○○○→濃
  4. 熟成感  若←○○○○★○○○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○○○★○○→濃
  6. 満喫感  弱←○○○○★○○○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○○○○○○○★→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○★○○○○→良
  9. 常  喫 無←○○○○○★○○○→有
  10. 個  性 弱←○○○★○○○○○→強







2014年8月26日火曜日

Celtic Talisman



セルティック・タリスマン(ケルティック・タリズマン)
バージニア葉、バーレー、キャベンディッシュ、チェリー、バニラ
製造国:イギリス



「セルティック・タリスマン」は本来「ケルティック・タリズマン」と発音したほうが正確なはずだが、カタログ等には全てセルティック・タリスマンと表記されている。直訳すると「ケルトの護符」。パッケージの左側に描かれている模様がそれだ。日本では「ケルト模様」としてよく知られている。
ケルト模様のデザインは様々あるが、十字、左右上下対称、一筆書きや編み物のような幾何学模様(ノット)、それらの組み合わせなどが特徴。
それぞれのパターンでいろんな意味合いがあり、たとえばアランセーターの縄目模様は元来は航海の無事を祈るためのお守りの意味があり、手編み故オリジナルの模様が船乗りと同じ数だけあったと言われる。
ミステリー・サークルなどにもしばしばケルティックの模様が見られる。

この缶に描かれた意匠がどんな意味を持つのか詳細は残念ながら分からないが、永遠性や繁栄(安定)を象徴している事だけは伺える。


葉様は明るいバージニアとダークキャベンディッシュのミクスチュア。柔らかなリボンカット。ちょうど同社のグラウスムーアとよく似ている。生葉の香りのキャラクターもよく似ていて、グラウスムーアより軽やかだが、いっそうフローラルでフルーティな甘い香りが鼻をくすぐる。
チェリーとバニラによる着香がされていることははっきり判別できるが、それらは個別に強く主張するわけではなく、ハーモニーがとても女性的でまるでポプリのようだ。シャンパンのような香りも見え隠れする。

さほどモイストではなく、開缶してすぐにボウルに詰められる。ほぐしももちろん要らない。火付きも火持ちもとても良い。

生葉の時の華やかさとは裏腹に序盤から豊かなアロマとたっぷりとしながらキレの良い喫味が支配する。生葉の時は女性的だったアロマは、着火と同時にハバナに似た熟成香に変化する。ハバナは土の香りに近いがこれはムスクに近い。バーレー種ブレンドの片鱗。

中盤の喫味はキレが増してくる感じだ。ムスクのアロマは弱くなり、バージニアならではの香りが増してくる。
爽やかというほどではないが、ほどよいスパイシーさと甘さのバランスがとても好感が持てる。
サミュエル・ガーウィスに共通する特徴として、生葉の甘い香りに比して、喫味の方は決して甘ったるさはない。「ヴァージニアの自然な甘さ」というものもこれみよがしなものではなく「しっかりと用意はしているから自分で引き出してごらん」と言われているようで、パイプのタイプや喫うたびに印象が変わる。

終盤はやや辛めに変化するので早めに終了したほうがいいかもしれない。テクニックによっても差はあるが上質な着香系ミクスチュアに共通する問題として、モイストをキープした葉ほど序盤と終盤の喫味の変化が大きいという点がある。
ただロングスモークは可能なので喫い方は人ぞれぞれ。
葉の開きが早いのでタンピングはこまめに必要。

これまで取り上げてきたサミュエル・ガーウィスのラインナップの中では群を抜いて分かりやすく、また喫いやすい素直な性格だ。パイプtobaccoの良い部分がしっかりと表に出ていて誰にでも引き出しやすく、初めてパイプを嗜んでみようという人にもおすすめできる。
惜しいのはなかなかこれを扱っているショップが少ないという点だ。知っている限り実店舗で買えると分かっているのが2店舗。今回は知己に特別に頼みこうして味わうことができた幸運に感謝。
こういうtobaccoこそどこでも手に入るようにして欲しいのだけれど、知名度が低い分仕方がない話なのかもしれない。

春の香りのグラウスムーアを引き合いに出せば、セルティックタリスマンは高原の夏のtobaccoだ。心の高揚とほんのり汗ばんだ肌を冷ましてくれる森の風、木陰のテーブルに盛られたフラワーアレンジとハーブと生ハムを使ったブランチの後に時間をかけて飲むカフェオレと一緒に。

喫味はミディアム。舌荒れは並。
時間帯は朝から昼過ぎ。
合う飲み物はミルク入りのコーヒー
1900円/50g(2014国内)


  1. 生葉芳香 弱←○○○○○○★○○→強
  2. 甘  み 少←○○○○★○○○○→多
  3. 味の濃淡 淡←○○○○★○○○○→濃
  4. 熟成感  若←○○○○○★○○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○○○★○○→濃
  6. 満喫感  弱←○○○○★○○○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○○○★○○○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○○○○★○→良
  9. 常  喫 無←○○○○○○★○○→有
  10. 個  性 弱←○○○○○○★○○→強


2014年8月22日金曜日

GoldenBat



ゴールデンバット
バージニア葉
喫煙時間:標準約7分、RYO約13分

ゴールデンバットは現存する日本最古の銘柄だ。100年はゆうに超える。
あっさりしたバージニアの甘い香りとすっきりとした味わい。
ピースのそれに比べればずっと淡白で辛味が勝つが、軽い分飽きのこないキレの良い喫味を楽しめる。
フレーバーは一般にラム酒と言われているが詳細は不明。

葉様はピースに較べてずっと細かく粉砕されており、葉色が明るくまるでオリエント葉のようだ。
1級葉を使用しているものはファインカットに近いが、しんせいやゴールデンバットなど3級葉を使用しているものは葉脈部分が多く、時折粉寸前のものがあったりする。この特徴はしんせいにも通じる。

葉詰めの密度は、他の巻きタバコに較べてずっと荒い。
この辺がゴールデンバットを個性あるtobaccoにしている要因でもある。

個人的には学生時代、一番お世話になったtobaccoでもある。
残念ながら当時のものとは巻きもパッケージも値段もすっかり変わってしまったが、味だけは当時とさほど変わっていないのが嬉しい。

30年前、ゴールデンバットは20本入り70円だった。当時のベストセラーであるセブンスターが180円だったから、当時としてもかなり破格だった。

破格故「くずタバコ」などと悪口を言われてもいたがとんでもない話で、ピースを選ぶかゴールデンバットを選ぶかは、単純に自分のふところ事情だけで、本当にうまいタバコであった。

というよりゴールデンバットの良さを分かるという事自体、ゴールデンバット愛好者だけが共有できる誇りといえるかもしれない。


「国民のタバコしんせい安くて量がある」という何かの替え歌をべろんべろんに酔っ払う度に歌っていた体育会系なノリを、ゴールデンバット喫いの変人達はふふんと一笑していた。

というのも、ゴールデンバットは一日一箱単位で買えるタバコではなかったからだ。
努力と智慧がないと愛用できない。
しんせいは運が良ければその辺のタバコ自販機で買えない事もなかったが、ゴールデンバットは当時供給がとても不安定で、毎週水曜日に街の一番大きなタバコ屋にて一人4箱ずつしか購入できなかったのだ。
4箱じゃ4日ももたないじゃないか!

そこで変人共(資本なし)は考えた。下宿のヒマな住人達を集めて夜な夜な麻雀をやる。バット愛好者は揃って麻雀が強かったので、負けた連中への貸しをチャラにしてあげる代わりに、水曜日に一緒にタバコ屋の前に並ばせる。かかるのは一人280円。8人並んで32箱、これを4人でわけあってもどうにか一週間は持つ。そうしてコツコツ確保したゴールデンバットのストックは常時100箱を超えた。
その100箱を好きな時に実費で分け合う。
もっとも下宿の住人達はみんな友情に厚かった(ヒマだった)から、麻雀なんぞ勝っても負けてもやらなくても並んでくれた。

この70円の名品こそが、僕に「吹かし(口腔内喫煙)」で味わうタバコの旨さを教えてくれたのであり、パイプや葉巻への入り口となったtobaccoでもある。



そんな訳で、RYOで喫おうがどうしようが結構どうでもいいのだけれど、やはりせっかくだからヘンプで巻き直してみよう。
上段:RAWの無漂白ヘンプ
中段:オリジナルのバット
下段、RAWで巻き直したもの
使用するのはRAWの70mm、無漂白のヘンプペーパー。
バットは葉詰めが荒いので、70mmローリングマシンにセットしても十分に間に合う。
昔のバットはちょうどこの手巻き70mmと同じレギュラーサイズの細巻きだったので、昔のサイズに戻すという事になる。
詰めは少しだけきつくなるので、過燃焼が防げて味にやや甘みが増す。
バットのキレの良い旨味が強調されてなんとも心地よい。
なんといってもただでさえ短いバットの喫煙時間が10分を超えるのが嬉しい。

バットの喫い方は、肺に入れずに口の奥の方で味わうのがいい。
例えばパイプをゆっくり燻らしている時間が無い時、何かに集中している時、知的作業のパートナーになってくれる。
そして、チェーンスモークがよく似合う。

惜しむらくはパッケージデザインの改悪だ。ピースにせよこのような歴史的文化的に残す価値のあるデザインは決してくだらない警告文を載せるために変更してはならない。さっさと元のデザインに戻すべきだ。

210円/20本入り(2014)


  1. 生葉芳香 弱←○○○★○○○○○→強
  2. 甘  み 少←○○○○★○○○○→多
  3. 味の濃淡 淡←○○○★○○○○○→濃
  4. 熟成感  若←○○★○○○○○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○★○○○○→濃
  6. 満喫感  弱←○○○○★○○○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○○★○○○○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○○○○○★→良
  9. 常  喫 無←○○○○○○○○★→有
  10. 個  性 弱←○○○○★○○○○→強

2014年8月8日金曜日

Dunhill Flake



ダンヒル・フレーク
バージニア
製造国:デンマーク(OEM)

開封すると、バージニアの葉のイラストと金封が現れる。
それを丁寧にはがして中紙をめくると、ひと目で上質と分かるフレイクが整然と並んでいる。

香りはまさにバージニア葉特有の、蜂蜜と花の香りをブレンドしたような甘い香り。
日本のピースがこれに近い香りだが、ダンヒルフレークはそれよりもう少し抑制の効いたものになっている。
もちろん着香はない。正真正銘バージニアのみの香りだ。同系のサミュエルガーウィス・フルバージニアと比べると、あまりに上品で繊細な香りだ。

葉様は明るいブラウン。サミュエルガーウィス・フルバージニアはプンパーニッケル(ドイツのライ麦100%パン。パンというよりライ麦版フレーク)に似ているが、ダンヒルフレークは見た目も香りもまるでアーモンドスライスクッキーのよう。


このtobaccoは、ほぐさず、キューブにもせず、そのまま折り曲げてパイプに詰めて味わいたい。
さほどモイストではないので缶から取り出してすぐに詰めても全く問題ない。一枚4g余、縦に折ってから半分の長さに折って、捻りながら詰める。


火つきは良好、火持ちもとても良く全く気を使わずにスロー&ロングスモークが可能だ。2時間を超えることも全く難しくない。

序盤からバージニアの上品な甘みとアロマが支配する。キツ過ぎもせず、軽過ぎもしない。
中盤はそれに爽やかさが加味されて実に軽快だ。ほのかに土の香りと、ワイルドベリーの気配。

終盤はややパンチが効いてくるが、抑制の効いた甘みと爽やかさに包まれている。しかもそれは軽々しさや心許ないものではなく、充実感に支えられている。

どこにも尖ったところや足りないところはない。上質なバージニアを味わいたいという望みを、リボンカットでもファインカットでもなく、きちんと調理されたフレーク(ケーク)で実現できるというのはこの上ない喜びであり贅沢だと思う。

ダンヒルはどのtobaccoも喫う度に「うん、これでいい」と思わせる要素をたくさん持っている。それは「可もなく不可もなく」ではなく「考えぬかれた中庸」というものを持っている。
様々なtobaccoを遍歴しても最終的にはここに落ち着くのではないかと予感させるのだ。フレークもそんなキャラクターだ。

以前、無人島にパイプ葉を一つだけ持っていくとしたら965を持っていくと書いたが、身軽な旅装を要求される旅先に持って行くならこのダンヒルフレークになるのではないだろうか。それは缶の小ささによるところも大きいかもしれない。サミュエルガーウィスの缶の約2/3ぐらいの大きさしかない。しかしそれ以上に大きな理由は、このtobaccoがtobaccoとしての基本を全て備えており「これでいい」と思わせるシンプルで単純明快なパイプ葉の長所を全て持ち合わせているところが大きい。
もう一つ言えば、優れたフレークはタンピングがほとんど要らない。これほど神経を使わずに済むフレークを他に探すのはなかなか難しい。良いtobaccoだ。


時間帯は問わない。ニコチン酔いの心配は中程度。舌焼けの可能性は少しある。
合う飲み物は水、紅茶。
1750円/50g(2014)

  1. 生葉芳香 弱←○○○○○★○○○→強
  2. 甘  み 弱←○○○○○★○○○→甘
  3. 味の濃淡 淡←○○★○○○○○○→濃
  4. 熟成感  若←○○○★○○○○○→熟
  5. アロマ  淡←○○★○○○○○○→濃
  6. 満喫感  弱←○○○○○★○○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○○○○○★○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○○○○★○→良
  9. 常喫可能 無←○○○○○○○★○→有
  10. 個  性 弱←○○○○○★○○○→強


2014年8月3日日曜日

Peterson System Standard 303


名称:ピーターソンシステムスタンダード303
形状:アップルベント型
製造国:アイルランド
ボウルチャンバー:内径約19mm、深さ約31mm 
フィルター:なし
平均喫煙時間:約80分。


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初めに言い訳すると、僕はあまりパイプにこだわりは持ってません。
パイプをコレクションするより、一種類でも多くのtobaccoを味わいたいのです。

一方ではパイプの形状や出来不出来によって喫味が大きく変わるという認識は人一倍持ってもいます。
自分のローテーションとバリエーションのペースを考えると最終的に少なくとも20〜24本は必要だと思います。

パイプ生活中断期に愛用パイプを紛失してしまったこともありますが、まずは実用第一に揃えている途上です。
ただその増加率もせいぜい1ヶ月に1本のペースでとても自慢するような逸品はありません。

故にブログで紹介するまででもないと思っていましたが、パイプ葉についてあれこれ書いている以上、やはりそれをどのようなパイプで味わっているのか一応は書いておかないと片手落ちになるなあと思い、恥ずかしながら少しずつではありますが開陳することにしました。
普及品の求めやすいパイプばかりですので、これからパイプを始める方の参考になれればと願います。

初回はピーターソンシステムについて書きたいと思います。

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スタンダード303はピーターソンシステムのラインナップの基礎となる製品で、ピーターソンならではの典型的なフォルムを持っている。

ピーターソンシステムは変わり種のパイプで、他のパイプとはちょっと異なる構造をしている。
普通のパイプはボウル〜シャンク〜マウスピースまで煙道は一直線につながっている。

しかしピーターソンシステムはボウルからシャンクに抜ける煙道が、マウスピースの穴とは直線で繋がっておらず、オフセットしている。

正確には煙道は一度シャンクの中の部屋に斜めに出る。そこでエンド。その部屋にマウスピースの先端が伸びてきて、煙が出て行くようになっている。


この事がどういうメリットを生むかというと、ボウルから部屋(ジュースチャンバー)に入った煙が冷やされて、ジュース(※)はジュースチャンバーに溜まり、湿気は内壁に吸われる。結果としてドライで冷やされた煙だけを吸い込むことができる。
このことで、さほど気を使わなくてもドライ&クールスモークが可能になり誰にでも理想的なスモーキングができるというシステムだ。パテントも取得されている。

ピーターソンのメリットはなんといってもジュースを気にせず吸えること。だから湿りがちなイギリス葉には持ってこいだ。含水率の高いtobaccoでもイージーに喫うことができる。
ベント形状も理想的で、長時間咥えっぱなしでも疲れが少ない。

特に感心するのはパフィングの時だ。
普通のパイプでは、火持ちを復活させる時に行うパフィングは味を落とすし舌を荒れさせる原因にもなるのであんまり頻繁にはやらない。ところがピーターソンではパフィングしてもゆっくり燻らしている時と味の差がそれほどではない。
この事は良し悪しで、ついついふかし気味に吸う事になるため味がおおざっぱになったり喫煙時間がやたらと短くなったりすることにも繋がるので注意は必要だ。

あまり知られてないピーターソンの長所として、連続使用が可能という点があげられる。
これはシャンクとマウスピースがテーパ式で喫後割とすぐに外せることと、ジュースチャンバーの水分キャパシティが大きいことによる。

ワンボウル目の喫煙が終了したらマウスピースを外し、モールでボウル、煙道とマウスピースを掃除し、ジュースチャンバーの水分をテッシュなどで丁寧に拭きとる。そうすることで3ボウル分ぐらいなら喫味も火持ちも落ちずに喫える。ちなみにジュースチャンバーの完全な乾燥には約一日かかる。

パイプの完全な掃除は常にシャンクとマウスピースを外して行い、ジュースチャンバーの乾燥のために分解したまま保管する。
マウスピースの煙道ルートが独特なため、掃除には特殊なモールが必要と思われがちだが、実際は普通のモールで十分に貫通できる。コツは、モールの細い方をマウスピースのシャンク側から通し、くるくると回転させながら進めていく。

煙道がボウル最底部ではなくやや上についているため、吸い残しがやや多めになることがある。最後まで吸いたい時は葉を煙道側に寄せるなどの工夫が必要だが、そうした喫い方よりも、灰をなるべく捨てずに喫い、残り葉は潔く捨てた方が味が落ちずに済む。

マウスピースの形状は好き嫌いが分かれるかもしれない。他のパイプのように正面に煙の出口が開けられておらず、上付きでちょうど上顎にあたるので、舌荒れは起きにくいが上顎荒れが起きることがある。
またこのことにより味がダイレクトに舌に乗ってこないことがあるのと、ブロー&ドローの際タンギングできないので、息の調整、特にブローがなんとなくぞんざいになってくる。逆に言えばぞんざいな喫い方でもそれなりに喫えてしまうということが特徴で、逆に感覚的な操作はやや難しいパイプということは言える。

もうひとつついでにこれは製造工程の問題だが、ブライヤーを染料で染めているせいか掃除のたびにモールが盛大に赤く染まる。

ピーターソンシステムは、総じて本流に位置するパイプではないと思う。しかし一度このイージースモーキングを体験してしまうと手放せなくなることは確かだ。特にながら吸いの多い人、イギリスtobaccoを愛する人にとっては愛用になることは間違いないし、クールスモーキングとは何かということを把握するには最適なパイプだと思う。特にパイプを始めたばかりの人にとっては、パイプスモーキングの最初の壁を乗り越える大きな味方になってくれるはずだ。

合うtobaccoは主にイングリッシュミクスチャー系。




(※)ジュース:tobaccoの葉は水分を含んでいるので、燃えると水蒸気を発生させる。その水蒸気が煙道に溜まる苦い味の水のこと。口元まで上がってくることは滅多にないが、ジュルジュルとイヤな音を立てたり、喫味を損なう事がある。なるべくジュースが出ないようにゆっくり喫するのが基本だが、葉の個性によってはそれを気にする事自体が煩わしいこともある。