パイプスモーキングの醍醐味は様々な個性のtobaccoの味わいが楽しめることです。
あまりに種類が多く、味わいや特徴が忘却の彼方に消えてしまったものも多々あり
自分の備忘録のためにテイスティングノートをつけ始めました。

パイプ葉は個人の嗜好性や飲み物、時間帯、体調、パイプによってもかなり変わります。
なるべく主観に流れないように書くよう注意は払っているつもりですが、あくまでも参考程度にされてください。お役に立てれば幸いです。
ついでにシガーやRYO、ウイスキーについても少し触れています。

2015年12月20日日曜日

G.L.Peace Lagonda


G.L.ピース(オールド・ロンドン・シリーズ)・ラゴンダ
使用葉:ラタキア、ヴァージニア、オリエント
原産国:アメリカ
価格:2850円/57g(2015)


Lagondaとは戦前イギリスの名車の名前です。アストンマーチンに買収されてからはアストンマーチンの車種の一つとなり、戦後しばらくして「アストンマーチン・ラゴンダ」の名前で復活したこともあります。

缶にも往年の名車(1920〜1930年代の一バージョン)と思しきイラストが描かれており、真性のクルマ好きにはたまらないものになっています。そんなわけで僕もジャケ買い(死語)したのでした。

葉様はラタキアのせいで濃いのですが、前述のラタキアNo.1ほどではありません。やや固め、小さめのリボンカット。

薫香は素晴らしく、奥行きのある複雑な酸味と発酵臭を伴うものです。最初は「絶対にペリクが入っている!それも本当にベストの配合で」と思いましたが、カタログや海外のレビューを見ても、どこにもそんなことは書いておりません。
それだけキプロス産のラタキアの燻製ぶりが素晴らしいのでしょう。

葉はやや乾燥気味なので、開缶してすぐにパイプに詰めても、何の問題もなく火が安定します。この辺はアメリカ産の高級葉に共通する良さだと思います。

イギリス産はウェットなものが多く、それはそれでとても好ましいものですが、火を安定させるまでややコツが要るので手軽とは言い難いところがあります。

喫味は終始安定して素晴らしい薫香のアロマを提供してくれます。
ほのかな甘味を伴い、終盤に行くに従いどんどんクライマックスが高まっていきます。
爽やかさもあります。まるでソーダのように味覚を刺激し、しかしそれは決して甘ったるいものではなく、実に抑制の効いた、質の良いハバナのような郷愁に満ちた甘さです。

しかしやはりなんといってもこの葉の美点はアロマでしょう。
煙量を少なく保ってアロマを感じる時、パイピストであることの喜びを実感します。

スモーキングタイムが終わるのが実に惜しい葉です。

食後のウイスキーと共に、でも一日を通していつでも良い時間を過ごすことができます。
ニコチン感は軽め、舌荒れの心配は中ぐらいです。

価格さえもう少し抑えめなら、常喫葉として申し分ないのですが、そこだけが惜しいところでした。



2015年8月23日日曜日

Butera's RoyalVintage Latakia No.1



ビュテラ・ロイヤルヴィンテージ・ラタキア・ナンバー1
使用葉:ラタキア、オリエント、バージニア
原産国:アメリカ
価格:2500円/50g(2015)

ラタキアを存分に味わいたい人のためのtobacco。
逆に言えばラタキアに慣れていない人には決しておすすめできない銘柄です。

とは言うもののの、じゃあラタキア感Maxでスゴイ世界なのかと言えば、そうでもないのです。
ラタキアの中では軽い(標準的な)キプロス系で、それが配合率がかなり高くなっているだけなので、お好きな方ならお察しの通り、味わい的にそれほど深いコクや芳香を放つ訳ではありません。
というか、トーベンダンスクの100%ラタキアでも紹介しましたが、ラタキアはそれ単体では風味はさほどありません。強い薫香が、他の主体となるバージニアやオリエントと重なることで全体の風味を飛躍的に深く強くする役目を持つのがラタキアであって、決して単体では奥行きのある葉であるとは言い難いところがあります。

ラタキアNo.1も、バージニアが配合されているとはいえ、さほどの甘みを期待できる訳でもなく、またオリエントとラタキア主体ですからニコチン感もそれほど強い訳ではありません。
ただ、ラタキア主体ブレンドのお手本のような葉ですから、どうしてもラタキア感を感じたくているなら、一度は喫ってみるのも良いかと思います。


バージニアとオリエントのラタキアに対する配合率はノーマルとは逆転しており、ラタキアが60%を超えるのではないかというほど葉様は黒く沈んでいます。

故に喫味もほぼラタキア主体です。時々ほんのりとした甘みを感じることもありますが、上澄みにほんのりといった感じで、終始淡々としたラタキアの渋みと爽やかなアロマが続きます。

煙量は大目に、大きめのパイプで豊かに燻らすのに向いています。
あるいは甘めのカクテルと共に、バーやリビングのルームノートにラタキアを漂わせたいという場合に向いているかもしれません。

ニコチン感は軽め、舌荒れの心配はあまりありませんが、満喫感の薄さから深くドローしたりするといがらっぽくなるので注意。



MacClelland FrogMorton on the Town

マクレーランド・フロッグ・モートン・オン・ザ・タウン
使用葉:ラタキア、オリエント(バスマ)、ヴァージニア
原産国:アメリカ
価格:2500円/50g(2015)

甘く爽やかな喫味が特徴の葉です。もちろん着香着味はしていないイングリッシュ系ミクスチュア。
パッケージには「Basma(バスマ)」という聞きなれない単語が。
カタログによればオリエントとラタキアのギリシャのバスマ村産のオリエント種の種で育てた葉を使用しているとのこと。バスマ村はアルバニアとの国境に近いとありますがgoogleMapではどうも見つけられません。まあそのうち調べましょう。
最近はオリエントのクラシカルでねっとりと絡みつくようなアロマと喫味に嵌り気味で、この「オン・ザ・タウン」にもそのしつこさを大いに期待して購入しました。

結果は良い意味で裏切られました。火を灯して最初に飛び込んでくるのはヴァージニアとラタキアの爽やかな甘みのハーモニーです。オリエントらしさが出てくるのは中盤になってから。突如アロマがそれと分かるものに変化してきます。しかしあのむせかえるような、いやらしいほどにセクシーなそれではなく、あくまでも爽やかでふわっとした節度のあるオリエンタルアロマでした。
いくらふかしてもお腹いっぱいになることのない、都会的でスッキリとしたエッセンシャルなオリエント。それでいてオリエントが弱い訳でもない。
「オン・ザ・タウン」と銘打った意味が本当によく分かります。

それにしてもフロッグモートンのラタキアは軽い。フロッグモートンオリジナルよりもさらに軽いです。

時間帯はデイタイム。合う飲み物は水、コーヒー、紅茶など。
舌焼けの心配は少しだけあり。ニコチン酔いの心配はなし。







2015年8月22日土曜日

Cornell & Diehl Habana Daydream




コーネル・アンド・ディール・ハバナ・デイ・ドリーム
原産国:アメリカ合衆国
使用葉:バージニア、ペリク、キャベンディッシュ、ラタキア、シガーリーフ
価格:2500円/57g(2015)

素晴らしいミクスチュアです。
夏のパイプでこれほどの選択肢はなかなか他にないのではないかというほどです。

ウイスキーもそうですが、日本の夏ではパイプもまたやや暑さで味が変わり、嗜好がかなり変わります。ウイスキーならロックやハイボールが美味い季節、tobaccoならシガーが美味い季節でもあります。

パイプ葉も消費の多い銘柄が変わってきます。
コクのある葉よりあっさりとしたキレの良い葉、ダンヒルならモーニングミクスチュアやロンドンミクスチュア、サミュエルガーウィズならパーフェクションなど。
そしてコーネルアンドディールのハバナデイドリーム。

カタログやレビューの幾つかでは「葉巻感!」という表現が目立ちます。
ネーミングからついつい連想してしまう味やイメージは確かにあるでしょう。
しかし実際には葉巻葉の使用はほんの僅かだし、日頃シガーを喫う人ならば、これを葉巻感と称するのにかなり無理があると思います。
故に「葉巻葉で作られたパイプ葉」を期待して購入するならやめておいたほうが無難です。

この葉の芯はブラックキャベンディッシュとペリクのハーモニーです。
特にペリクは生葉の芳香とアロマの第一印象を決定しています。そして喫味のベースをキャベンディッシュが支え、そこにラタキアの薫香が喫味に深さと豊かさを演出します。

ではシガーリーフはどこでどんな役割を果たしているかというと、気をつければ分かりますが意識しなければ背景に溶け込んでしまうほどの、色彩といった感じです。
もちろんそれがこの葉のキャラクターを決定づけているのは確かです。それは喫味ではなく中盤〜終盤のアロマに如実にあらわれています。
熟成香が、それまでのペリクとは違う、キャベンディッシュの甘さと渾然一体となった柔らかく女性的な陶酔を与えてくれます。
終盤ややいがらっぽくなる傾向がありますが、ニコチン感も強くないので、時間帯を選ばずいつも燻らせたくなる魅力にあふれています。これでモヒートやダイキリなどラム系のカクテルをいただくのも悪くないでしょう。
欠点は価格。2500円に常喫性を納得できるか否か、それだけです。

  1. 生葉芳香 弱←○○○○○○○★○→強
  2. 甘  み 弱←○○○○○○★○○→甘
  3. 味の濃淡 淡←○○○○○★○○○→濃
  4. 熟成感  若←○○○○○○★○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○○○★○○→濃
  6. 満喫感  弱←○○○○★○○○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○★○○○○○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○○○★○○→良
  9. 常喫可能 無←○○○○○○○★○→有
  10. 個  性 弱←○○○○○○★○○→強


2015年7月23日木曜日

Samuel Gawith Fire dance flake




サミュエルガーウィズ・ファイヤダンスフレーク
原産国:イギリス
使用葉:ヴァージニア
着香:ブラックベリー、ブランデー他

フレークの喫し方については国の内外を問わずブログでも動画でも諸説フンプンいろんな自説が紹介されています。僕もこれまで散々もっともらしいことを書いてきましたが、結局は四つ折りにしてボウルにねじり込んで火付きや火持ちを気にしないフリをして喫う事が一番多いのです。ほぐすのもめんどくさいし。

こうして喫うフレークの利点は、まずはボウルが長持ちするという点です。普通のミクスチュアならせいぜい1時間、フレークは半日近く詰めっぱなしということも珍しくありません。もっともそれは火持ちの悪さによってブロー&ドローをサボればあっという間に消えてしまって火が点いていない時間の方が長いという前提付きですが。

ですが、よく考えれば一日咥えていた時代のパイプの喫い方はこんなものではないでしょうか。火を付けて一服するけれど、その時間はせいぜい数分。
ほっとけば立ち消え。
仕事に戻る。
次の休憩や思い出した時にまた火をつけて数分(数服)。

もちろん火持ちの良いフレークもあるし、火持ちが良くなくても火持ちを良くして何十分も燻らせることもできなくはありませんが、ミクスチュアのようにあんまりスパスパやっているとあっという間に舌荒れを起こしてしまいます。

僕のような絵描きにとっても、制作に夢中になっていると、いつまでも火が消えないミクスチュアなどは、過燃焼を起こして舌荒れに泣かされます。
その点フレークは。意識しないでいると火が消えてくれますから、手を休める都度火を付けてインターバルを取れるし、制作中に葉を詰め替える手間暇に集中力をそがれることもなく、そういった点ではとても助かっています。



さて、ファイヤダンスフレークは、サミュエルガーウィズのフレークの中では珍しい着香系のフレークです。開封するとベリー系の甘い香りが漂います。
と言ってもあくまでも自然なもので、他のヨーロッパ・アメリカ系にあるようなチューインガムやチョコレート系のそれとは全く違うもので好感の持てるものです。

生葉の形状はフレークですが、他のサミュエルガーウィズのフレークよりスライスが薄く、少し脆くなっています。一枚をパイプに詰めてもいっぱいになることはなく、大きめのパイプだと半分ぐらいしか埋まりません。

火付き、火持ちはサミュエルガーウィズのフレークの中ではかなり良い方です。
喫味はとてもマイルドです。ほのかな甘味はヴァージニア由来のもの。燻らす煙からもほのかにベリーのアロマが漂います。
満喫感もそれほどでなく、バイト(舌荒れ)もヴァージニア単独としては少ない方だと言えるでしょう。

サミュエルガーウィズのフレークは本格的なものばかりですが、半面火持ちや詰め方にコツの要るもの、そして味もややベテラン向きのが多いのですが、このファイヤダンスフレークは、初めてサミュエルガーウィズのフレークを試してみたいという人にとってはかなり良い選択になるのではないでしょうか。

ただ、ヴァージニアとして喫うにはややパンチ不足、キャベンディッシュとして喫うにはまだ生っぽい、ちょっと中途半端なところもあります。
この葉の肝はルームノートではないかと思います。控えめでありながら甘く艶っぽい香りは女性的ですらあります。
この葉がとある女性パイピストのために作られたというエピソードにもうなずけます。

生葉のフルーティな香りとアロマを味わいつつ、軽いアルコールと一緒に喫うのが向いています。
合う飲み物はビール、カクテル。時間帯は夕方〜。

  1. 生葉芳香 弱←○○○○○○★○○→強
  2. 甘  み 少←○○○★○○○○○→多
  3. 味の濃淡 淡←○○○★○○○○○→濃
  4. 熟成感  若←○○○○★○○○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○○★○○○→濃
  6. 満喫感  弱←○○○○○★○○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○○○○★○○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○○★○○○→良
  9. 常  喫 無←○○○○○★○○○→有
  10. 個  性 弱←○○○○○○★○○→強


2015年7月3日金曜日

Samuel Gawith Skiff Mixture






サミュエル・ガーウィズ・スキッフ・ミクスチュア
原産国:イギリス
使用葉:ヴァージニア、ラタキア、オリエント


中野にもここ数年ショットバーがずいぶんと増えてオーセンティックを目指すところもちらほら。
そんな中のとある蔵酒の種類の多さを売りにしている小さなバーに入った時のことでした。
美味いウイスキーを二杯ほどいただいたところで気分も良くなりパイプを取り出すと、間髪を入れずにNGを出されてしまいました。
マスター曰く、換気の問題で紙巻きタバコは良いが葉巻とパイプはお断りとのこと。
もちろんにこやかに従いパイプを収めましたが「ああ、このバーはダメだな」と判断して早々に退散しました。

そのマスターはまだ若いですがウイスキーの利酒や歴史にとても拘り知識も豊富な様子。しかし基本的なことを分かっていない。
何かというとまず、タバコの中でもっとも煙量が多く空気を汚すのは、葉巻(シガー)でもパイプでもなく紙巻きタバコであるという点。
次に、酒の味と香りを濁して台無しにしてしまうのは、葉巻(シガー)でもパイプでもなく紙巻きタバコであるという点。
最後に、上質なウイスキー、特にスコッチは無煙でテイスティングするだけでなく、パイプやシガーと切っても切れない味覚のペアであるという点。

いくら酒の事を語れてもシガーやパイプのことを知らなければ、その知識は知識の牢屋から出ることはできない。

ワインと違ってウイスキーはストイックなグルメ志向や健康志向などのスノッブ感覚では何にも楽しめないものです。ワインや出汁を嗅ぎ分ける敏感な味覚のみで素人テイスティングをやってしまえば、いずれ日本で飲まれるウイスキーは山崎やボウモアばかりになってしまうでしょう。なぜアードベッグやラフロイグがあの味で長年飲まれてきたのか、このバーテンはもう少し勉強する必要があると思います。
まあ、とにかくショットバーでシガーやパイプを断られるというのは初めての体験でした。

さて、そんなウイスキーに似合うパイプ葉といえばイングリッシュミクスチュア。そしてその中でお気に入りのひとつがサミュエルガーウィズのスキッフミクスチュアです。
前に取り上げたスクアドロンリーダーととても良く似たブレンドですが、スクアドロンリーダーはほのかにリコリス系の着香があり、オイリーな中にも爽やかな後味がありましたが、スキッフミクスチュアは加香が全くされていない上にオリエントの配合がさらに多くヴァージニアが少なく、クラシカルかつハードボイルドな印象です。

生葉の香りはむんとしたオリエントとラタキアの香り、やや細かいリボンカット。
ややモイストで着火にコツは要るものの、火持ちは良好。
終始ラタキアとオリエントの主張が続きます。個人的にはラタキアがもう少し欲しいと思う事もありますが、全体的には過ぎず足りなくもなく余計な主張をせず淡々とtobacco本来の香りと向き合うことができるのは好印象です。

バルカンソブラニーの再来だと言う人もいます。僕はこれは正しい指摘だと思います。長いこと「バルカンブレンド」の定義や評判について悩んでいますが、バルカンをハードボイルドなオリエント系のミクスチュアとして見るならば、これほどミッドクラシカルな志向で常喫できるtobaccoはなかなかないのはないでしょうか。

味わいとか甘さとかヒントとかそういう小賢しい括りではなく、まとう煙の中でウイスキーと共にどんな服を着ていたら似合うのかを真剣に考える機会をこのtobaccoは与えてくれます。

しかしながらこのtobaccoはパイプ上級者にとっては到達点ではありません。
単なる道具です。
つまり「タバコなんてそんなこだわって薀蓄垂れてちまちま喫うもんじゃ無いだろ」という大雑把な事を言う男の煙が実は「正統派のイングリッシュミクスチュア」であり、着ているものは何のバリっと感もないが実は仕立てのスーツであった…という向きの常喫葉であると言えるでしょう。
スキッフミクスチュアを燻らす彼はまたこうも言うでしょう。「ウイスキーなんて、そんなポンコツなベロで薀蓄垂れてちまちま飲むもんじゃないだろ」

自戒。

合う飲み物はウイスキー、時間帯は夜。

  1. 生葉芳香 弱←○○○○○○★○○→強
  2. 甘  み 少←○○○★○○○○○→多
  3. 味の濃淡 淡←○○○○○○★○○→濃
  4. 熟成感  若←○○○○○★○○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○○○○★○→濃
  6. 満喫感  弱←○○○○○○★○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○○★○○○○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○○○○★○→良
  9. 常  喫 無←○○○○○○★○○→有
  10. 個  性 弱←○○○○○○★○○→強

2015年5月24日日曜日

新・桃山(Momoyama)


桃山
ヴァージニア、ブラックキャベンディッシュ他
原産国:日本(デンマークOEM)

2014年暮れからパッケージやレシピが変わり、新しい「Momoyama」になりました。以前は名称の最後にあったバージョン名の「II」が消えています。

発売前のサンプルインプレッションで「より甘くなった」という声を聞いていましたが、僕の印象では甘くなったというより、ややパンチが出て香りが自然に近づいたという印象の方が強いです。
またヴァージニアのリボンカットが以前より質が上がり弾力と長さ、湿り気を感じます。

タバコ屋さんに行くと桃山は「イングリッシュミクスチュア系」として売られていますが、「II」はれっきとしたコンチネンタル系着香tobaccoのひとつでした。

それが「新」になってやや自然な香りになり、確かにイングリッシュ系に近づいている感じはします。着香はラムと言われていますが「II」ではラムというよりは糖蜜系の香りが支配していました。「新」ではこの糖蜜系の香りが抑えられて、代わりにほのかにバニラが加えられている印象があります。それが全体的に「甘さ」という印象を強めている気はします。

「II」は良くも悪くも「タバコ」という感じが否めませんでした。
しかし「新」ではヴァージニアの自然な甘みが確かに増しています。そして熟成感のあるアロマと喫味が中盤からどんどん顔を出してきます。「タバコ臭さ」が消えて満喫感が増し、「足りない」と思うことが「II」に較べてなくなりました。
ヴァージニアの品質向上もさることながら、オリエント葉の存在感が増えています。
惜しむらくはバニラ香が強くなったことで、喫味に少し酸味を伴う雑味が増えた事でしょうか。これは決して複雑さや旨さを提供するものではないだけに残念なところです。

火付き火持ちともに良く、全く気を使うことがありません。
相変わらず喫いやすいtobaccoです。

時間帯はデイタイム。


  1. 生葉芳香 弱←○○○○○★○○○→強
  2. 甘  み 少←○○○○★○○○○→多
  3. 味の濃淡 淡←○★○○○○○○○→濃
  4. 熟成感  若←○○○○★○○○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○○★○○○→濃
  6. 満喫感  弱←○○○○★○○○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○○○○○★○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○○○○★○→良
  9. 常  喫 無←○○○★○○○○○→有
  10. 個  性 弱←○○○○★○○○○→強


2015年5月22日金曜日

BBB Oriental Mixture




BBB・オリエンタル・ミクスチュア
使用葉:オリエント葉、ヴァージニア、ブラックキャベンディッシュ
原産国:デンマーク

BBBは元々イギリスのパイプメーカー。現在のブライヤーパイプのメーカーの元祖的存在なんだそうです。パイプメーカーすなわちタバコ屋さんでもあったというのはダンヒルを筆頭にごくノーマルな事ですが、現在はどこのメーカーもドイツやデンマークにOEM委託しており、純粋なイングリッシュミクスチュアにお目にかかることはまず稀になってきました。

BBBもドイツのコールハスだったりデンマークのSTG(スカンジナビアン・タバコ)を渡り歩いているようです。

オリエントミクスチュアはその名の通りオリエント葉を中心にしたブレンドです。

葉様はやや細かいリボンカット。褐色でやや透明感のあるオリエント葉に交じって、時折黒褐色のブラックキャベンディッシュが見え隠れします。

カタログ等を見ると「無香料」とありますが、明らかにキャベンディッシュからと思われる洋酒系の香りがします。バニラも少し香りますが、洋酒由来のものだと思います。

喫味は終始軽く素直な性格です。キツすぎず、軽すぎず、甘い喫味とエグみのあるヘイタイプのアロマが主体です。
決して味の深いtobaccoではありませんが、火付き、火持ち共に良く、何の気遣いも要らずにパイプを燻らせることができます。
パイプを始めたばかりの方におすすめです。

逆にイングリッシュミクスチュアらしさやオリエントらしさを求める方には不向きかもしれません。オリエントのこってりしたアロマや余韻を期待するとハズレ。逆に言えばクセがないので、むしろ舌荒れを気にする人や、ニコチンのきついtobaccoを避けたい人には良い選択になるかもしれません。良くも悪くもヨーロッパ系ミクスチュアであり、香りが少ないという部分だけがイギリスtobaccoのレシピを継承しているに過ぎません。
ラタキアを少々混ぜてあげるとアロマが引き立ってオリエントの個性が出てきますが、そうすると同じBBBのスコティッシュミクスチュアに近くなるのかな。

時間帯はデイタイム、ニコチン酔い、舌荒れの危険性はほぼ無し。

  1. 生葉芳香 弱←○○○○★○○○○→強
  2. 甘  み 弱←○○○○○★○○○→甘
  3. 味の濃淡 淡←○○○★○○○○○→濃
  4. 熟成感  若←○○★○○○○○○→熟
  5. アロマ  淡←○○★○○○○○○→濃
  6. 満喫感  弱←○★○○○○○○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○★○○○○○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○○○○★○→良
  9. 常  喫 無←○○★○○○○○○→有
  10. 個  性 弱←○○★○○○○○○→強

2015年3月30日月曜日

Blending Tobacco Latakia-Cypern (Torben Dansk)




トーベンダンスク・タバコ・スペシャル・ブレンディング・タバコ・ラタキア・シーパン(キプロス)
使用葉:キプロス産ラタキア(100%)
原産国:ドイツ(DAN)
価格:1950円/50g(2015)

ラタキアとは、簡単に言えばオリエント葉の燻製です。
シリアの地中海沿岸にあるラタキア地方で、余ったtobaccoを家の中、暖炉(囲炉裏)の天井に吊るしていたところ、燃料として使われていたラクダの糞でいぶされてできた燻製がオリジナルと言われています。

乾いて縮れた真っ黒な葉色と独特の薫香、スパイシーさと熟成された風味が特徴で、イングリッシュミクスチュアのブレンドには欠かせない葉になっています。
現在は需給のバランスや政情不安等の影響でシリア産よりもキプロス産の方が多く用いられているようですが、今でも一部の英国産ミクスチュアにはシリア産が使われているようです。
シリア産とキプロス産のラタキアの違いについてはシリア産ラタキアの時にまた改めて紹介したいと思いますが、我々が普段ミクスチュアのtobaccoを買い求めてお目にかかる「ラタキア」風味の多くはキプロス産で薫香が強く喫味にラタキアの風味付けが如実に現れるのが特徴ですが、オリエント由来のアロマの複雑さはシリア産にやや劣ります。

そもそもラタキアはとても薫香やアロマが強い割にtobaccoとしての風味は単体では現れにくく、ラタキアのみで喫うことはまずありません。ミクスチュアの10%〜50%の割合でブレンドすることによって、他の葉に隠れていた風味を引き出し、パイプの複雑な味わいを引き出してくれる調味料のような存在です。

このトーベンダンスクのラタキアもパイピストが自分でブレンドして使うことを前提に売られています。

僕はこのブレンド用ラタキアを、サミュエルガーウィスのバージニア系(フルバージニア、ゴールデングロウ、ベストブラウン、1792フレーク)と合わせて使うことが多いです。

特に上質なバージニアのゴールデングロウとの相性は抜群で、バイト(舌荒れ)を和らげ、美味いが単調になりがちなバージニアの風味に複雑な変化をもたらして豊かな喫味とアロマに変化します。50:50ぐらいでブレンドするとかなりディープなミクスチュアになります。

1792フレークとのブレンドはさらに複雑で、アロマが際立って強くなり深い沈思の世界に浸ることができます。こちらは1792が七割、ラタキアが三割程度が双方の良さをもっとも深く味わえるかもしれません。
ブレンドする際はフレークを揉みほぐしてラヴドの状態にしてミックスします。

ちなみに100%で喫うことも可能ですが、元々甘みやニコチンの弱いオリエント葉をかなり深く燻製化しているため、オリエントならではの脂っぽさもなく単調で渋みばかりが前面に出るので喫味面での充実感はありません。アロマも、どことなく熟成の深い葉巻を喫っているようなアロマは味わえますがバージニアとブレンドした時のようなたっぷりとしたアロマには欠けます。

TorbenDanskのブレンド用シリーズには他にシリアラタキア、オリエント、ペリク、ヴァージニア、キャベンディッシュなどがあり全てドイツのDanTobaccoが作っています。
先に紹介したBill Bailey's Balkan blendもDanTobacco製で、おそらく同じ素材のキプロス産と思われるラタキアを半分程度使っているように思われます。ラタキアミクスチュアならではのスパイシーな薫香を楽しむことができます。




2015年3月25日水曜日

初号スーパーニッカ復刻版

マッサンも今週で最終回、ニッカ復刻版もいよいよ大トリです。

スーパーニッカは1962年の発売以来、都合2回のモデルチェンジをしていて、現行は3代目になるそうです。

僕は2代目スーパーニッカ(現在は廃盤)しか飲んだことはありませんし、もうその味もかなり記憶のかなたですので細かい飲み比べをすることはできませんが、わざわざここで飲み比べなどしなくてもスーパーニッカが美味い一流のウイスキーであることは十分に知られていることですから必要ないことでしょう。

スーパーニッカがニッカの最上位商品であったころ、現在の我々が知るところの「余市」の香り、味、余韻というのは、まさにこのスーパーニッカそのものであり、ニッカ…というより日本のウイスキーの最高峰と言って差し支えないものでした。
スモーキーフレーバー、スムーズさ、パンチ、甘みと濃い風味、そしてバニラ香、これが「ニッカの酒」そのものであり「ウイスキーそのもの」でした。

また自分にとってもカティ・サークと共に「ウイスキーというのは美味いものだ」と知ることになった最初の酒です。

スーパーニッカ全盛の時代は1970〜80年代。ジャパニーズ・ウイスキーの代表はサントリーオールドとサントリーリザーブ、そしてこのスーパーニッカが担っていました。
しかしながら、サントリーファンにはやや申し訳ない話になりますが当時はオールドもリザーブもストレートではお世辞にも美味いとは言い難い、なんとも珍妙な味がしたものです。
特にオールドはアルコール臭と共にやってくるべたつく様な甘さといつまでも残る後味は何がどうしてそうなるのか理由は分かりませんでしたが「ウイスキーとはまずいもの、だから水割りにして飲むもの」というイメージに直結していました。
確かに水割りにするといくらでもするすると飲めたものでしたが、ウイスキーというよりはよくできたカクテルのような感じです。

僕が初めてスーパーニッカに出会った時、ウイスキーには独特の言語がありその言語を理解してこそウイスキーならではの美味さというものがあるということに気が付きました。
カティサークでストレートの美味さを知り、スーパーニッカで味わいの複雑さ、奥深さを知りました。

本来はスーパーニッカはオールドよりもむしろリザーブの上位銘柄として位置しています。
しかし当時の実際の世間のイメージは
リザーブ→高級クラブやバーのキープ用
オールド→バーと寿司屋の定番
スーパーニッカ→通向け洋酒居酒屋で見かける程度

というような扱いになっていました。
そういえば同価格帯にはキリンのロバートブラウンという優れたカナディアン・ウイスキーがありました(これも現在とは全く味が違う)が、こっちはもはやキワモノ扱い。

スーパーニッカの味はそれらのウイスキーの中でも別格でした。
ビシッと決まるスモーキーフレーバー、キレのよい舌触り、自然な甘み、フルーティな鼻に抜ける香り、そしてビターチョコレートのような苦味の後に来るバニラ香。いくら飲んでも飲み飽きない複雑なフレーバーが次から次へとやってきます。

国産シングルモルトウイスキーのない時代には、これほど味わいが深くて濃いウイスキーはなく、あとはオールド・パーやジョニ黒などの高級スコッチを探すしかありません。


この復刻版を口に含む度、ウイスキー原体験だった二代目スーパーニッカの記憶がよみがえってきます。
残念ながら初代と三代目は味わったことがありませんが、こうして復刻版を味わっていると、ビターがやや復刻版の方が強く、またフルーティさが二代目の方がややあったような記憶もあり、しかしそれぐらいの違いしか思い起こせません。そう考えると初代〜二代目にはそれほど味の変化はなかったのかもしれません。

他聞によれば三代目はかなり大きくスモーキーさが失われたとか。
ニッカの他のブレンデッドウイスキーも昔に比べるとずいぶん甘くスムーズに変化してきているので、スーパーニッカについてもその辺の変化は容易に想像できます。

もっとも今のニッカも美味いです。それはやはり時代とともに求められるものも変わり、また我々の味覚も変遷しているのですから当然そうなるのでしょう。
サントリーにしたって昔は不味いなあ嘘っぱちだなあと思って飲んでいたのに、いつのまにか「あれ?意外に美味い」と感じる酒が増えているのですから。
変わったと言われる現行のスーパーニッカもぜひ飲んでみたいと思っています。

ボトルのフォルムもちょうど二代目と同じです。願わくばボトルについても初代の手吹きのボトルを復刻して欲しかったですが、コストの問題でそれは無理な注文というものでしょう。

初号復刻版を、僕は自分自身のウイスキーの素晴らしい原体験である二代目スーパーニッカの思い出として味わっています。

おすすめはトゥワイスアップ(ウイスキー1に対して、常温水を0.5〜1の割合で)。シングルモルトとはまた違う、そして凌駕する素晴らしい芳香と風味が口の中に広がります。






2015年3月20日金曜日

家飲みスコッチモルト 〜The GlenLivet 12年〜


友人に薦められて家飲み用に入手したグレンリヴェットの12年。
現在日本国内で最も安価に手に入る12年シングルモルトの一つではないでしょうか。実売は2500円〜4000円前後/700ml。ニッカの余市や宮城峡の12年物をしのぐコストパフォーマンスです。

ピート香はさほど強くなく花の香りが強く出ています。シェリー樽のカスク香と甘みがとても強く、濃厚でとろっとした味わいです。宮城峡にとても良く似ています。余韻もブーケのようです。

ストレートがもっともこのお酒の良さを感じることができるでしょう。
飲みやすくスムーズですが、加水してゆくとどうしても香りが散漫になり、味にも苦味が出てきます。アロマもそれほど強くはありません。
このことを僕は欠点とは思っていません。むしろこのクセのなさ、ストレートでのフローラルな味わいはモルトの入門編としては非常に優れています。

アルコールの角は少しだけあります。例えばジャパニーズ・ウイスキーで例えるならノンエイジとして扱われるレベルの熟成度合いです。
やはり気温が低いスコットランドと高温多湿の日本ではエイジングの年数に若干の差が出てくるのかなあと感じます。

最近台湾のKAVALANが創業7年目にしてスコッチを凌駕する味で話題になったり、日本の誇るイチローズ・モルトも決して本場と同じ環境で熟成されたものでないということを考えると、もしかするとウイスキーというのは意外にも高温熟成で良いものが速成できるのかなと想像したりしています。

まあ、それでもウイスキーというのは本来なら何万円も出して飲むようなお酒ではないという僕の信条からすれば、12年というお酒の時間そのものが手軽に入手でき、自宅でもったいながらずに飲めるという事の方がずっと重要なことです。

スコッチウイスキーにはいくつか有名な産地がありますが、グレンリヴェットはハイランド地方のスペイサイドという地区で作られています。
スペイサイドのモルトは甘く香りが高い華やかな味のモルトが多く、グレンリヴェットもその特徴をよく持っています。

それにしてもスコッチ、特にハイランド地方には「グレン」の付くブランドがありすぎです。
グレンドロナック、グレンリベット、グレンフィディック、グレンゴイン、グレングラント……まだまだあります。どれも美味い酒ですが、バーで酔いが回る度ごちゃごちゃになってしまうのが悩みの種です。




2015年3月17日火曜日

スコットランドの家飲みウイスキー 〜The Famous Grouse〜


スコットランドでもっともポピュラーと言われる「ザ・フェイマス・グラウス」(ノンエイジ)。
ボトルラベルにはスコットランドの国鳥である雷鳥(グラウス)が描かれています。
マッカランやハイランドパークの原酒をマリアージュしてブレンデッド・ウイスキーに仕上げています。

実売1200〜1500円、国産だとサントリー角やブラックニッカスペシャル、リッチブレンド辺りと似たような価格帯になります。

味はニッカの同価格帯のウイスキーにとてもよく似ています。ハイランドをお手本にしてウイスキーづくりを始めたと言われるニッカの方が似ているのでしょうけれど、どちらもいわゆる正統派スコッチのベクトル上にあります。

ブレンドに関してはハイランドパークよりマッカランの方が多めの感じで、軽めのピート香、ズシッと来るカスクフレーバーとコク、蜂蜜のような甘み。決して初心者向きではありませんが、味は濃厚で飲みごたえがありながらスムーズで飲みやすいウイスキーです。

1000円前後のブレンデッドスコッチはアルコール臭がきつかったりして、安酒のイメージが拭い切れないものが多いのですが、このフェイマスグラウスはアルコール臭はあまりせず、ふくよかさと甘みが勝っています。

ただ余韻に若干の苦味は残ります。この苦味は好き嫌いが分かれる部分かもしれません。決して奥行きのあるものではなく、飲んでいるうちに何かのアテ(マリアージュ)を要求してきます。
スモーキーフレーバーがもう少し強ければこの辺は美点に変化すると思うのですが、スムーズさとの兼ね合いになるので敢えてそうしないところなのかもしれません。
試しに手元にある余市の10年を少しだけ垂らしてみると実に素晴らしい後味になりました(笑)
それはともかく味の濃厚さという意味ではかなりコストパフォーマンスの良いお酒ではないでしょうか。ベテラン向きです。

ところでバーに行けばもっぱら珍しいシングルモルトやカスクストレングス(水で薄めていない樽出しのモルト。55%〜65%とアルコールが強いのが多い)を頼みます。
しかし高くて美味いのは当たり前、バーでワンショットだけ舐めて「美味い不味い」を言ってもあまり意味がないように思います。だってどれも美味いのですから。
ラムやシェリーと同様、シングルモルトには風景があります。その風景を感じるにはワンショットで十分です。

ところがそのワンショットの値段で一瓶買えてしまうぐらいの安ウイスキーと毎晩向き合っていると、カスクだスモーキーだ風景だという前にその美味い不味いの二値がとても気になる項目になってきます。

効率の悪い蒸留方法で作られた農産品でありながら、同時に画一化された工業製品であることも求められるウイスキーへのブレンダーの工夫、苦心、誠実さ、魂胆、妥協…。いろんな思い。
この「例の有名な雷鳥」はブレンダーのストーリーも含め、そんな期待や想像に答えてくれる良いウイスキーだと思います。










2015年3月14日土曜日

McClelland Frog Morton





マクレーランド・フロッグ・モートン
使用葉:ラタキア、バージニア
原産国:アメリカ
価格:2500円/50g(2015)

一言で言い表せば、ラタキアのアロマを存分に味わうtobacco……。
いや、もう少し踏み込んだ言い方をすれば、オリエント的なアロマを楽しむtobaccoと言えるでしょう。

ミクスチュアのレシピはラタキアとヴァージニアとなっていますがラタキアの割合がとても多く、葉様はほぼ黒色、時折ダークブラウンのヴァージニアが見え隠れする程度です。
香りはほぼラタキアの薫香、そして微かな酸味を感じます。

さて、この酸味香の正体は一体何から来るのか、実際に燻らせてみるとどうもラタキアだけではないような気がします。
というより、このラタキア、軽い。
そして喫味にラタキアの原材料であるオリエントの名残がかなりある。
(ラタキアはオリエント葉をらくだの糞で燻製したもの)

察するにオリエントの燻製度合いに差があるものをブレンドしているか、あるいはキプロスやシリア(現況では殆どあり得ない)から輸入したラタキアではなく、オリエントをメーカーが独自に燻製しているのでは?と思わせる軽さを感じます。


例えば本場のラタキアが50%も入っていれば、かなり渋くて濃い喫味になります。残り50%にバージニアが使われればバージニアの甘みは十分に出ます。
しかしこのフロッグモートンはあまり甘みを感じず、そして渋みもそれほどではありません。
味はほんのりと爽やかな甘さと、ほぼ全域に渡ってラタキアとオリエントのやや脂っこい、まとわりつくようなアロマのみです。
しかし生のオリエントほどにはしつこくない。
むしろ爽やかな感じさえ受けます。

燻蒸の度合いがコントロールされ、オリエント葉がラタキアに変わってゆくグラデーションをうまく表現しているような喫味に仕上がっています。
生葉の酸味香も、この燻蒸度合いが関係しているように思えます。

オリエントのコクを持ちながら決して胸焼けすることのない軽さを持ち、ラタキアの深みを持ちながら決して渋さに嫌気が差すことのない爽やかさを持っている、そんなtobaccoです。

喫味そのものよりも、煙量をたっぷりめにして、アロマを重点的に味わうといいと思います。パイプtobaccoはシガレットと違い主流煙だけでなく副流煙がとても大切な味の「ファクターとなります。シガレットのように有毒な紙の副流煙ではなく純粋にtobaccoの葉だけが持つ芳醇なアロマを提供してくれるのです。
喫味は軽くアロマは深く。
オリエント重視の葉は喫っているうちにその濃いコクにうんざりしてくることもありますが、この葉はそんなことはありません。

やっぱりオリエントとラタキアのアロマはいいなあ…そう思わせてくれるtobaccoです。
気に入りました。

時間帯は全日、合う飲み物はビール、ウイスキー、水など。
舌焼け、ニコチン酔いの心配は殆どなし。


  1. 生葉芳香 弱←○○○○○○★○○→強
  2. 甘  み 弱←○★○○○○○○○→甘
  3. 味の濃淡 淡←○★○○○○○○○→濃
  4. 熟成感  若←○○○○○○★○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○○○○★○→濃
  6. 満喫感  弱←○○★○○○○○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○★○○○○○○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○○○○○★→良
  9. 常喫可能 無←○○○○○○○★○→有
  10. 個  性 弱←○○○○○★○○○→強

2015年3月2日月曜日

Dunhill Night Cap




ダンヒル・ナイト・キャップ
使用葉:ラタキア、オリエント、ペリク、ヴァージニア
原産国:デンマーク(OEM。ブランドはイギリス)
価格:1,750円/50g(2015)

昔々「パイプ覚えたての半可通はとにかくダンヒルしか認めない。他の英国葉を覚えたての半可通がそれを嗤う」というのをベテランスモーカーが言うのを聞いて、半ば自嘲気味に笑ってしまった事がありました。

さて今の僕はどっちの半可通だろう?と自問自答しつつこの歳になって初体験の(!)NightCapを開封してやはりダンヒルはいい香りだなあ、美味いなあと感心を新たにしました。

ブランクを挟んで長いこと965にお世話になっていますが「OEMになってからのダンヒルは不味い」という評には若干の抵抗感もなきにしもあらず……というのも、他のダンヒルの葉はどうか分かりませんが965を開けるたびにどうも缶かロットかによって味にばらつきがあって、美味い時となんか味気ないなあと感じる缶があるからです。
この辺のばらつきがOEMになってからのダンヒルtobaccoの評判を下げたのではないかなと思うところもあります。

それでもダンヒルのラタキアの芳香はやはり他とはずいぶん違う柔らかくて熟成が渋い、まるで高級な紅茶のような趣があるし、オリエントは鼻腔に都会の大人の香りをまとわり付かせて止まないのは確か。もしかして自社製造していた昔とはヴァージニアやキャベンディッシュの品質は変わったかもしれません。
しかしダンヒルのラタキアやオリエントの風味やブレンドは、独特の品格があります。



ナイトキャップはそんな中でも際立って素晴らしい芳香を持つ葉です。
現在国内で手に入るダンヒルの葉の中で唯一、ペリク配合のミクスチュアで、それが他のミクスチュアとの大きな違いですが、僕はこのナイトキャップの最大の特徴はオリエントとこのペリクのコンビネーションではないかと感じています。

基本はラタキアとヴァージニア、そしてオリエントの典型的なイングリッシュミクスチュアですが、ペリクの独特の熟成香と爽快感が全ての葉の個性を前に前に押出してきます。

特筆すべき点はアロマです。鼻腔に抜ける全ての香りはパイプ葉のお手本のような熟成感、それが終盤に向かってペリクによってまとめられナッツと磨き上げられた家具に触れているような深い満足感を提供してくれています。

「過不足のない」これがダンヒルの持ち味ですが、ナイトキャップは全てが濃厚に、コントラストがくっきりと際立っています。

ダンヒルラインナップ(国内)の中ではロイヤルヨットと並んでこってり感の強い葉ですが、方向性は965やロンドンミクスチュアの上級編といった感じです。
その名の通り、夜、グラスを傾けながらゆっくりと沈思に耽る時にピッタリのtobaccoだと思います。美味いtobaccoです。

舌荒れ、酔いの可能性は中程度、時間帯は夜、合うのはウイスキーなど。

  1. 生葉芳香 弱←○○○○○○★○○→強
  2. 甘  み 弱←○○○○★○○○○→甘
  3. 味の濃淡 淡←○○○○○○★○○→濃
  4. 熟成感  若←○○○○○★○○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○○○★○○→濃
  6. 満喫感  弱←○○○○○★○○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○○○○★○○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○○○○★○→良
  9. 常喫可能 無←○○○○○○○★○→有
  10. 個  性 弱←○○○○○★○○○→強

2015年2月25日水曜日

初号ハイニッカ復刻版




ニッカの復刻版を手に入れました。
今回はハイニッカです。
またしても発売初日です。
マッサンの放映もたけなわ、ニッカ(アサヒ)も便乗していろいろ頑張ってくれて嬉しい限りです。

現行ハイニッカ
ハイニッカは元々「ウイスキー二級」として1964年に発売されました。
今は酒税法が変わって等級は廃止されましたが僕が酒を覚えたての頃にはまだ存在していて、要するに普及版のウイスキーでした。
ウイスキー二級というと、サントリーならトリスやレッドがそれに相当しますが、ハイニッカの美味さというかウイスキーらしさはちょっとそれらとは比べ物にならない特別なところがあって、まさしくスコッチの並み居るブレンデッドを凌駕するような酒です。

そのハイニッカ、1980年代後半にモデルチェンジしています。味はライトで香りも若干弱いところがありますが、程よいピート香、パンチ、キレ、何杯でもおかわりできてしまう余韻を持っています。

ただこれだけの味わいを持ちながら、現在ハイニッカは殆どのスーパーやコンビニ、小さな酒屋ではまず手に入りません。ハイニッカはやがて消えてゆく運命にあるお酒のようにも思えます。というのも現在はブラックニッカクリアがあります。このクリアはノンピートでありながら結構コクのある味わいを持った良いウイスキーで、しかも破格の安さでかつてのハイニッカが担っていた棚をすっかり奪ってしまったからです。

そんなハイニッカの復刻版、まず香りで笑ってしまうのですが、もちろんウイスキーの香りもしますがそれを凌駕するウォッカや甲類焼酎の匂い。良くも悪くも懐かしい(笑)
現行ハイニッカはこんな匂いはしません。ブラックニッカクリアは少しだけするかな。

これは現行ハイニッカが「カフェ式グレーン」をブレンドに使っているのに対し、初期のハイニッカはブレンド用に(他メーカーのウイスキーが軒並みそうであったように)ほぼスピリッツに近いグレーンを使用していたからという事実に基いての事とは思いますが…何もここまでバカ正直に再現しなくても…。

まあ、でもサントリーがマッサン人気にまさしく便乗で、現行ホワイトの中身そのままにラベルだけ「白札」に変えるだけの「ナンチャッテ復刻」をしてるという現実を思えば、逆にニッカは今も昔も本当に真面目な会社なんだと思います。

そんなわけで正直に言って、現行ハイニッカよりウイスキーとしての香りの質は落ちてしまっています。でも不思議とそのスピリッツ臭さがキライじゃない(笑)そして余韻にはちゃんとバニラも(ほのかではありますが)出てくる。

そして味わいは逆に現行ハイニッカよりも濃い印象があります。余市原酒特有のきっちりとしたスモーキーフレーバーと潮味、パンチが効いて実にリッチです。そして若干の甘みさえ感じます。当時の二級酒の13%上限という限定されたモルト比率の中でウイスキーらしさを追求しようとすれば、自ずとスモーキーでリッチフレーバーなモルトを使う事になったことでしょう。

実際、香りを除けば決して安っぽさは感じさせない男らしいウイスキーです。
二杯、三杯とグラスを重ねるうちに、「あ、そうだ。ニッカというのはこうだったなあ」と段々思いだしてきました。
ウイスキー好きを唸らせるに必要十分な要素を持っていながら、同時に初心者を寄せ付けない気難しさを持っている。阿りが一切ない代わりに一度ウイスキーの味を覚えた身にとっては堪えられない深い味わいと個性。
故に理解されず、そんじょそこらの酒屋では手に入らないという販売力の弱さ。

そう考えると、今コンビニに並んでいるブラックニッカクリアの分かりやすさ、優しさはニッカのイメージをガラッと変えたのかもしれません。

飲み方は、ストレートかロックでしょうか。水割りにするとウッディな香りも立ってきますが味は若干アルコール臭い苦味が目立ってきます。この辺も初心者向きじゃないなあ。

最近はモルトの濃い味や香りに慣れてしまってますが、ウイスキーの良し悪しはシングルモルトよりも味の薄まったブレンデッドに大きく出ます。

ハイニッカは現行版も復刻版も、同価格帯の普及版ブレンデッドスコッチ、バーボン、ブレンデッドジャパニーズの中では、本当によく古き佳きブレンデッドウイスキーの味を守っている気がします。特に昨今ではスコッチの普及版ブレンデッドの品質低下が著しい故に、相対的にその評価は上がっていると言っても良いのではないでしょうか。

願わくば、現行ハイニッカの復権を。
(角なんかよりずっと美味いんだから)











2015年2月18日水曜日

Rattrays 7 Reserve



ラットレー・セブン・リザーブ
使用葉:ヴァージニア、ラタキア、オリエント、ブラックキャベンディッシュ
原産国:ドイツ(イギリスブランド)
価格:2250円/50g(2015)




先述のレッドラパリーと同じ葉組のミクスチュア。でカタログ等では「レッドラパリーより軽め」と書いてある。

けれども僕の印象は決して軽いtobaccoなどではなく、太くて深いtobaccoだった。

葉様はやや乾燥気味のリボンカット。香りはヴァージニアとややツンとした酸味のキャベンディッシュの香り。ラタキアの薫香ももちろんするがキャベンディッシュにまぎれている様に感じる。


火付き、火持ち共に全く申し分ない。
序盤、ヴァージニアの甘みがしっかりと来る。レッドラパリーで目立った青臭さや煙たさは全く感じない。しかし青臭さや煙たさは本来ヴァージニアから出てくるはずのもの、喫味から言っても7 Reserveの方がヴァージニアの割合は多いはず。レッドラパリーのあのヘイタイプっぽさは何が原因だったのだろう。

中盤、甘みに加えてこってりとしたオリエント特有のオイリーなアロマが主張し始める。クライマックスはこの中盤だと思う。アロマはオリエントだけではなく、キャベンディッシュのやや熟成気味の酸味がいいアクセントになって、より深いリラックスに誘う。

そこで初めて気づく。レッドラパリーと7 Reserveの味の差はオリエントにあると。
7 Reserveのしっかりしたオリエントのオイリーなアロマとナッティな喫味が、ヴァージニアとラタキアをがっちりと押さえて抑制の効いたものに仕立てあげている。

終盤、アロマがどんどん深くなる。オリエントのしつこさはあるがブラックキャベンディッシュとのハーモニーがとてもよくラタキアの薫香を深いところで響かせている。名残惜しさ、余韻を残して終了。

燃えは速いが味はゆったりと燻らせられるイングリッシュミクスチュアの典型。個人的に線が細くパイプ感の薄いレッドラパリーよりも線が太くアロマに奥行きを感じることができる 7 Reserve が好み。

ダンヒルのマイミクスチュア・965やサミュエル・ガーウィスのパーフェクションを思い出させる味でもある。

ニコチン感はレッドラパリーより強めで満喫感は大きい。
舌荒れの心配はややあり。時間帯は夜。合う飲み物は水、ウイスキー。

  1. 生葉芳香 弱←○○○★○○○○○→強
  2. 甘  み 弱←○○○○○★○○○→甘
  3. 味の濃淡 淡←○○○○○★○○○→濃
  4. 熟成感  若←○○○○○★○○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○○★○○○→濃
  6. 満喫感  弱←○○○○○★○○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○○○○★○○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○○★○○○→良
  9. 常喫可能 無←○○○○○○○★○→有
  10. 個  性 弱←○○○○○★○○○→強


2015年2月14日土曜日

Samuel Gawith Squadron Leader Tobacco




サミュエル・ガーウィズ・スクアドロン・リーダー
原産国:イギリス
使用葉:ヴァージニア、オリエント、ラタキア
価格:1900円/50g(2015)

とても爽やかでいながら濃い味わい、そしてリッチなアロマを持つtobaccoだ。味の中心となるのはヴァージニアの甘みとオリエントのコク。ラタキアは生葉の芳香とアクセント。

前回に書いたラットレー・レッド・ラバリーに較べるとはっきりした個性を持つ。
それはサミュエル・ガーウィズの全てのtobaccoに共通するのだが、深く濃いフレーバーと、爽やかでキレの良い甘みが同居しているところ、そしていつまでも包まれていたいと思わせる絶品のアロマだ。

生葉はやや大きめのりボンカット、ラタキアとオリエントの芳香、そして若干のリコリス風の香り。同社の他のミクスチュアにも時々ある、自然な甘い香り。

ややモイストな葉だが、火付、火持ち共にとても良い。
序盤、爽やかな甘みがとても美味い。ややメントールにも似た爽やかさ。しかしそれに反してアロマはオリエント特有の濃くてまとわりつくようなリッチなアロマが延々と主張する。
中盤、味、アロマ共に深みを増してくる。バター。
終盤はさらに少し熟成の進んだワインのような複雑な渋みとスムーズさ、そしてオイリーなとろみが強くなる。

味の爽やかさ、キレの良さに似合わずややリッチ&ストロングなところがあるのでニコチンに弱い人はやや注意。僕も2ボウルぐらいになると若干お腹いっぱいになる。実際のニコチンの量はさほどでもないとは思うので、オリエント特有のバターのようなアロマに酔うのかもしれない。舌焼けの心配は少ない。

一言で表現すれば、オリエントをしっかり味わいたい時のtobacco。しかしそれだけでなくラタキアで締めるところは締め、そしてヴァージニアの甘さもしっかり味わえるなんとも贅沢なtobaccoなのだ。

合う飲み物はウイスキー。時間帯は夜〜深夜。

  1. 生葉芳香 弱←○○○○○○★○○→強
  2. 甘  み 少←○○○○○★○○○→多
  3. 味の濃淡 淡←○○○○○○★○○→濃
  4. 熟成感  若←○○○○○★○○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○○○○★○→濃
  6. 満喫感  弱←○○○○○○★○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○○★○○○○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○○○○★○→良
  9. 常  喫 無←○○○○○○★○○→有
  10. 個  性 弱←○○○○○○★○○→強




2015年2月11日水曜日

Rattrays Red Rapparee



ラットレー・レッド・ラパリー
使用葉:ヴァージニア、ラタキア、オリエント、ブラックキャベンディッシュ
原産国:ドイツ(イギリスブランド)
価格:2250円/50g(2015)



ラタキアの薫香を中心にした典型的なイングリッシュミクスチュア。一言で言えば、ダンヒルのマイミクスチュア965に似た味わいを持っているが、それよりはややあっさり目で少しアーリーモーニング寄り。

葉様はやや乾燥気味のリボンカット。香りはラタキアが目立つが、それほど強い訳ではなく、ラタキアがニガテ気味の人にも好感が持てると思う。
火付き火持ち共に良く全てにおいて意識せずに済み、常喫葉としての端正な素性が感じてとれる。

ただ、僕があまりにサミュエルガーウィズの分かりやすさに慣れてしまったのか、今ひとつこの葉について多いに語るべきモチベーションを高めることができないまま、缶を空にしてしまった。

なぜなのかしばらく考えた挙句、それがこのレッドラパリーの「イングリッシュミクスチュアらしさ」と「タバコらしさ」にあるのではないかという結論に至った。

ラタキアとヴァージニア中心に組まれたミクスチュアの持ち味はあくまでも自然で典型的だ。ヴァージニアでありながら甘みは少ない。脇役としてのオリエントが深みを演出する。

終始青臭さといがらっぽさがつきまとう感じはある。これを良しとするか否とするかは喫い手の嗜好性に委ねられるだろう。ラタキアでありながらヘイタイプでもあるというようなそんな評価もできるかもしれない。

しかし各社の同系イングリッシュミクスチュアの味の違いというのは、もはや微妙を通り越して個人の主観に負う方が多くなってしまう。
ダンヒルなら965やロンドンミクスチュア、サミュエルガーウィスならパーフェクションやスクアドロンリーダー、ラットレーならレッドラパリーといいうような、お決まりのミクスチュアの一つだ。好みと贔屓で選べば良いと思う。

この葉に特有の感想を述べれば「オレはパイプを喫っているゾ」という構えた感じを全く持たなくて済むというのはあると思う。僕自身も特段違和感を感じることがないままあっという間に一缶を空にしてしまった。
というのはやはりこのtobaccoが持つ素性の良さのせいに違いない。
マイルドだが舌焼けの危険性あり。時間帯は終日。

  1. 生葉芳香 弱←○○○★○○○○○→強
  2. 甘  み 弱←○○★○○○○○○→甘
  3. 味の濃淡 淡←○○★○○○○○○→濃
  4. 熟成感  若←○○○★○○○○○→熟
  5. アロマ  淡←○○★○○○○○○→濃
  6. 満喫感  弱←○○○○○★○○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○○○○★○○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○★○○○○→良
  9. 常喫可能 無←○○○○○○○★○→有
  10. 個  性 弱←○○★○○○○○○→強



2015年2月2日月曜日

サントリーのまっすぐなウイスキー 〜Suntory CREST 12〜



サントリークレスト12年
ブレンデッド

1989年、サントリー(壽屋)の90周年を記念して「響17年」と共に発売されたサントリーの高級ブレンデッド・ウイスキー。それまで「ローヤル」が頂点だったサントリーのブレンデッドウイスキーラインナップの上位、いわゆる「ブレンデッドのヴィンテージ物」として2006年まで売られていました。その後ローヤルや響にも12年ものがラインナップされたことで販売終了、今はデッドストックだけしか手に入らないと思います。

このクレストも父が長らく酒棚に放置したままにしていたもの。
父が今年家を離れ特養に入所することになったため、身辺整理の機会に譲り受けました。
といっても元々酒は一滴も飲まない人で、なのに何故かブランデーやウイスキーの贈答が多く、棚にはレミー・マルタンやカミュ、オールド・パー、ジョニ黒など、当時の高級酒が何本も何年も飾り物になっていたのでした。

僕の洋酒の先生はこれらの飾り物達でした。20代〜30代、帰省する度に惜しげもありがたみもなくこれらのボトルを我が物顔で空けてました。
父の下戸のおかげで、息子がブランデーやウイスキーの味を正しく覚えることができたと言っても過言ではありません。深謝。

クレストはその中で未開封のまま最後まで残っていたボトルのひとつでした。
発売当時の価格を見ると5000円。しかも酒税法改正後でウイスキーが安くなってからの価格ですから、国産ウイスキーとしてはかなり高級な部類です。

素性は素直で、個性はそれほどないけれどヴィンテージモルトの良さを活かした良質なウイスキーです。今となっては決して高級な感じはしません。ニッカで言うところのスーパーニッカぐらいかなあといったところ。

第一印象はサントリーの常でややグレーンのアルコール臭さが気になりますが、しばらくすればモルトの香りが開き、奥行きのあるフルーティさとキレの良い甘さが心地良いウイスキーの顔を出します。サントリーにしては例外的にピート香を感じることができ、ウイスキーらしく、ストレートでもスッキリとした味わいを楽しむことができます。そしてマスカット風味と奥行きがあり余韻もしっかりとしています。白州モルトの印象が強いです。

ウイスキー通ならブレンデッドジャパニーズの最高峰に「響」を挙げる方も少なくないと思います。クレストはその響12年に系譜的に繋がるウイスキーだと感じます(味わいは全く異なります)。
思うに、このクレストを境にサントリーのウイスキーの哲学、信念というものがかなり変化したのではないでしょうか。

サントリーのウイスキーは長年、ニッカと較べるとウイスキーそのものを味わうというより、やはり「日本料理に合うこと」「日本人の繊細な味覚に合わせる」ことを再優先にしてきた感があります。故に飲み方のメインは水割りやハイボール。

角やホワイト、オールドはそんな時代を長いこと引きずってきました。水割りやハイボールにすると美味いがストレートではとても飲めないという、誰もが一度はウイスキーに感じてきたジレンマです。
それが逆に「水で割っても腰砕けがない」という不思議なサントリーマジックも生み出したのも事実ですが。

しかし現在の山崎や響はそういったかつてのサントリーの「ご提案」は影を潜め、ウイスキーをしっかりと味わって欲しいという哲学への変化を感じます。
水で割るよりストレートの方が断然美味いのです。

シングルモルトやブレンデッドをストレートで味わえるというのは、日本人の舌が変わってきたせいもあるでしょう。
しかしそれだけではなく、やはりジャパニーズ・ウイスキー自身も変化(進化)しました。

クレストは、そんな過渡期に誕生したブレンデッドにおける初めてのヴィンテージです。当時の5000円というかなり高い価格帯やバブルの時代の雰囲気を敢えて無視して「ジャパニーズウイスキー」という括りで見れば、クレストは何の曲芸も施さず、素直で良心的なブレンドをきちんとした「普及版」ヴィンテージ・ブレンデッドではなかったかと思うのです。
あんまり普及はしなかったみたいですが。



2015年1月29日木曜日

速報インプレ 〜初号ブラックニッカ復刻版〜



tobaccoのブログのはずなのにウイスキーネタが続いてしまいますが、それもこれも初号ブラックニッカ復刻版の美味さにぶっ飛んでしまったせいです。

近々発売されるとは聞いていましたが発売日までは知らず、たまたま入ったスーパーの棚にあったのを買ってきました。後で確認したら発売初日(1/27)でした。
呼ばれてました。

この初号ブラックニッカ復刻版は、創業者竹鶴政孝氏が1956年にブレンドし発売された初代「ブラックニッカ」の復刻版だそうです。
初代ということは二代目もあるわけで

初代:1956〜1965
二代目(スペシャル):1965〜
となっていて、ブレンドが異なります。

その他にブラックニッカという名前が付いたウイスキーには
ブラックニッカクリア(コンビニでも売っている最廉価版)
リッチブレンド(シェリー樽原酒を使った甘い香り)
ブラックニッカ8年(8年以上熟成の原酒を使ったブレンデッド)
と、なんかゴタゴタしています。


とまれ初号復刻版。
まずは手短に第一印象を書いておきますと、コク、パンチ、ピート、甘み、レーズン、バニラ、チョコレート、潮味、キレ、深い長い余韻。
全部ある。これでブレンデッド。
特に香りは余市譲りのバニラとピート。さすがにモルトには及びませんが(当たり前)、しっかりと受け継いでいます。
余市のグレーン割り。そのグレーンも上質。そしてWebページの説明によるとノンチル(常温濾過)。

現行のブラックニッカスペシャルやリッチブレンドも十分美味いのですが、この復刻版は反論を覚悟の上で正直に言ってしまえば、香りを除けば風味やウイスキーらしさの点ではサントリー「山崎」のノンエイジより上。これで1500円/720mlとは、いくらマッサン放映中とは言え、ニッカさん飛ばし過ぎでは?
と心配になってきます。

ブラックニッカリッチブレンドとはもう比較になりません。
リッチブレンドが美味いとは言え最初の飲みくちにアルコールの刺激が強く出るのに対し、初号復刻版は口に含んですぐにとろりととろけ、さらにピュアモルトのようなパンチとコクが舌に広がります。その後濃厚な風味が広がるのですが、その奥行きは雲泥の差です。

残念ながら最近現行のスペシャルにお目にかかってないので、スペシャルとの飲み比べができないのですが、復刻版でこれほどぶっ飛んでしまったということは、自分の記憶と舌を信じる限り、やはりかなりの違いがあるように思えてなりません。
こんなにトロっとはしてなかたし、ロックが合うウイスキーだったような気もするし奥行きも違うなあと、ぼんやりあいまいな感想。

しかしスペシャルも価格の割にはかなり上質なウイスキー。ライバルのランク上のウイスキーやブレンデッドスコッチを凌駕する味ですから、そのうち入手してしっかりと飲み比べしてみたいと思っています。

ロックや水割りが美味いかストレートが美味いかは、ブレンデッド・ウイスキーの場合、選択のとても大きな目安になると僕は勝手に思っているのですが、この復刻版はストレートが本当に美味いです。
水や氷で割るのが本当にもったいなくて、普段はシングルモルトをちびちび加水しながら飲む僕が、気が付くとチェイサーなしで二杯三杯と空けてしまうほどです。

12万本(1万ケース)の限定販売だそうです。
来月下旬にはハイニッカの復刻版も出るそうです。






2015年1月27日火曜日

ジャパニーズモルトの定点 〜ピュアモルトから余市へ〜





「余市」は日本を代表するシングルモルトウイスキー、ニッカ創始者竹鶴氏の酒造りの哲学を感じさせるウイスキーです。

スモーキー、ピーティ
濃厚
フェノール、カスク香
重厚さ、力強さ
バニラ香
フルーティさ
塩味

ウイスキーに欠かせない全ての要素をバランス良く持った稀有の存在です。
「余市」を飲むたびに、これ以上のものは要らないなあとつくづく感じます。
「宮城峡」が女性的なら「余市」は男性的なウイスキーと言えるでしょう。



しかしこのピーティな余市を始めとする濃い味わいのピュアモルトが日本人に広く支持されるにはずいぶんと長い年月がかかったように思います。

その先祖というか露払いというか、そういう役目を果たしたモルトウイスキーがあります。

日本でピュアモルト(大麦麦芽だけで蒸留〜熟成された、グレーンを混ぜないウイスキー)のウイスキーが販売されるようになったのは比較的新しくて1980年代です。

1982年頃にニッカから「シングルモルト北海道」が、続いてサントリーから1984年に「山崎」が発売されます。しかしこの頃はまだ日本ではブレンデッド全盛の頃で、また二つともかなり高価だったこともあって全くと言っていいほど認知されていませんでした。

それどころか「モルト」という酒の概念すらよく知られておらず、「山崎」のCMの名コピー「何も足さない、何も引かない」はアンチ派をして逆に「やっぱりサントリーは今まで混ぜ物だらけだったか」と邪推させてしまうような始末でした。
ニッカ「シングルモルト北海道」に至っては認知度はほぼゼロ。僕も存在は知っていても実物は一度も見たことがありませんでした。

まあそれでも今日の日本のウイスキーの「モルト」全盛のきっかけを作ったのはサントリーの地道な宣伝啓蒙のおかげといって間違いないでしょう。


一方、誰でも飲める安くて旨いモルトを日本で初めて作ったのはニッカです。
その名も「ピュアモルト」。
1987年発売で、僕も発売と同時に酒屋に走ったのを覚えています。赤、白とあって、確か後から黒が追加発売されたような記憶もありますが…3つ一緒だったかな、記憶が定かではありません。とにかく赤と白を抱えて帰った憶えがあります。

第一印象は、「濃い!強い!きつい!」でした。スモーキーでピーティー、
とにかく今まで飲んでいたブレンデッドのウイスキーとは別物で、香り、味の全てが濃厚でコントラスの強いものでした。

特に白は当時はアイラ・モルト(スコットランドアイラ島で作られるウイスキー、ピーティで個性的なウイスキーが多い)をバッティングしていたらしく、ピート香が当時としてはあり得ないほど強かったのでした。
一本(500ml)を空けるのにずいぶんと長いことかかりました。
これでは売れなかったと思います。

それでも飲みなれるとその力強さと味の濃さの虜になり、その後しばらくはウイスキーといえばモルトしか飲めなくなってしまった時期が長く続きました。これのおかげか知りませんが正露丸風味のラフロイグを初めて飲んだ時にも「美味い!」と素直に思えました。

その草分け的な「ピュアモルト」がやがて「余市」「宮城峡」に発展していきました。

《その他に「オールモルト」(「女房酔わせてどうするつもり?」という中野良子、田中美佐子、石田ゆり子らのCMとコピーで有名)や「モルトクラブ」というウイスキーもありますが、この二つはは若干伝統的なモルトの作り方とは異り、厳密にはブレンデッドウイスキーの部類に入ります》

ピュアモルト「黒」は「余市」と、「赤」が「宮城峡」と似ています。
「白」だけは現在、該当する商品がない感じです。やはりアイラ風味に振った味わいは、ジャパニーズウイスキーとしてはやや受け入れられ難いのかもしれません。

ちなみに「竹鶴」は「余市」と「宮城峡」のバッティングで、余市をまろやかにしたような味わいです。

ともかく「余市」ですが、芳醇な香りとアイラ的な力強さの両方を兼ね備えています。

「ノンエイジ」はウッディで力強さが際立ちややアルコールの角が残り男っぽい味わいが身上ですが、余韻のバニラ香がとても強く、気が付くと引き込まれてゆく深い味わいを持っています。特にハーフウォーター(ウイスキーをその半分以下の量の水で割る)ではパッと香りの花が咲いて、廉価版とは思えないほどです。

「10年」はややアルコール度数が高いのですが、逆に飲みやすくなっています。
アルコールの角が取れてまろやかになり、滑らかで甘く、フルーティさがやや出てきており、芳醇で心地良い余韻がいつまでも続きます。ただしバニラ香と潮味は少し弱くなっています。

味わいや余韻は明らかに10年、12年と経つに連れて深まっていきますが、ノンエイジが劣っている訳ではなく甲乙つけがたいところがあります。個人的にはノンエイジのはっきりとした味わいが好きです。よく売れているスコッチモルトの12年ものにも負けてないと思います。

ウイスキーはモルトにせよブレンデッドにせよ一般的に熟成年数の多いウイスキーほどストレートの方が美味しく飲めるのですが、熟成が足りずに不味い酒はロックや水割りにしないと飲めないようなところがあります。

その要因は「アルコール臭さ」にあると思います。刺激臭、刺すような味、そしてピートやスモーキーとは違う薬臭い苦味というようなものが残っているものです。

これが樽で長年熟成されると、不思議に和らぎまろやかで甘くなっていきます。舌に乗せ、それが喉に滑らかに落ちていく時の芳香、味、余韻が全て好ましく思えるようになるのです。

ところが「余市」や「宮城峡」はノンエイジから既に「アルコール臭さ」の嫌味はなく、独特の個性と強さを演出しています。そして10年、12年と熟成を重ねるに連れて、まろ味と長い長い心地良い余韻、後味が加わっていきます。
これこそが真面目な酒造り、美味いウイスキーの特徴です。

山崎が万人のためのウイスキーの完成形だとすれば、余市はウイスキー好きのための「ウヰスキー」、その完成形の一つと言えると思います。

ウイスキーの味に慣れてきたら、ぜひ試してみてください。






2015年1月22日木曜日

Samuel Gawith Best Brown Flake




サミュエルガーウィズ・ベスト・ブラウン・フレーク
使用葉:ヴァージニア、無着香
原産国:イギリス
価格:1900円/50g(2015)

葉様はやや暗い赤みを帯びたブロークンフレーク、フレークだが柔らかく持ち上げればもろもろとほぐれる。香りはヴァージニアのほの甘く柔らかい香りのみ。

火付き、火持ちはサミュエルガーウィスのフレークの中では例外的に良い。ほとんど気遣いは要らない。

序盤、最初の一喫目から、ライト&スムーズだということが分かる。それでいてヴァージニアの優しい甘みとサミュエルガーウィスらしい芳しいアロマが立ち上る。

中盤、マスカットの爽やかさといちじくの甘さ。葉が柔らかいため、ゆる詰めだと燃焼による葉の盛り上がりが大きく、火持ちを良くするためにはこまめなタンピングが必要だが、一度冷やして再点火した葉もまた違ったアロマと喫味を出して美味いので、火持ちはあまり気にしないほうがいい。

終盤に近づいてややアロマに青臭さが増し喫味もシガレットのようなエグみが顔を覗かせてくるが、ライトさは変わらない。エグみに交じって甘さはしっかりと下支えしてくれている。上品で節度ある甘さだ。いつまでもこれを味わっていたいと思わせてくれる。この底力がサミュエル・ガーウィスらしい。

ところでこういうシガレットライクなエグみを持つ葉を「ヘイタイプ」と呼ぶのだそうだが、このヘイタイプという言葉は何かを誤解させる感じがしていつも耳目にしっくり来ない。
「ヘイ(干し草)」の芳香にも乾燥や発酵度合いでいろいろあって一様ではないし、そもそも現代の日本の都会で暮らしている我々が干し草を引き合いにtobaccoを語る事自体リアリティに欠ける気がする。
例えば同じヘイタイプとされる、先に触れたマクバレンのヴァージニアフレークとはその喫味もアロマも似ても似つかない。
エグみやルームノートの第一印象は確かにシガレットに近いかなと思わせるが、味わえば味わうほど遠くなる。干し草やシガレットと比べるよりも、ベストブラウンフレークは同社の他のヴァージニアと比較したほうがよりその輪郭がはっきりする。

サミュエルガーウィスには、フルヴァージニア、ゴールデングロウ、そしてこのベストブラウンと3つのヴァージニアフレークがあって、それぞれ喫味、アロマとも個性が分かれる。
喫味が一番ストロングなのはフルヴァージニア、中間がゴールデングロウ
そしてもっともライトなのがベストブラウン。
フルヴァージニアは喫味はストロングでハマると深い味わいを持つ。アロマが若干わかりにくくそっけない部分もある。アロマがもっとも強いのはゴールデングロウ。青臭さを持ちながら時間と共に劇的な変化を起こす。
ベストブラウンフレークのアロマは、果実のような瞬間もあり、またシガレットの様な瞬間もあり、また若干の透明感を感じる。

舌荒れの危険性はヴァージニアの宿命でややあり。
ニコチン酔いの心配は要らない。
合う飲み物はウイスキー、コーヒー、水など。
時間帯はオールタイム。


  1. 生葉芳香 弱←○○★○○○○○○→強
  2. 甘  み 弱←○○○○○○★○○→甘
  3. 味の濃淡 淡←○○★○○○○○○→濃
  4. 熟成感  若←○★○○○○○○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○★○○○○→濃
  6. 満喫感  弱←○○★○○○○○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○○○○★○○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○★○○○○→良
  9. 常喫可能 無←○○○○○○★○○→有
  10. 個  性 弱←○○○○★○○○○→強



2015年1月20日火曜日

初めに何を飲んだらいいか 〜ニッカ「宮城峡」(ノンエイジ)〜


「ウイスキーを飲んでみたいけれど何を飲んだらいいか分からないのですが」と何人かに言われました。

そんな方にはとりあえず、ニッカの「宮城峡」かサントリーの「山崎」をおすすめします。この二つはジャパニーズ・ウイスキーのいわゆる「シングルモルト」と呼ばれるウイスキーの代表的な銘柄の一つです。

僕はニッカ党なのでニッカ「宮城峡」を特にお薦めします。

宮城峡はウイスキーというよりはブランデーに近いフレーバーとテイストを持っており、ウイスキーの独特の風味である「煙臭さ」があまりなく、逆にフルーティさが強調された華やかな味わいです。1万円を超えるようなハイランドスコッチに負けないほどの深い味わいが、わずか1500円(ノンエイジ)で手に入ります。ニッカのモルトはこのコストパフォーマンスの良さも魅力です。

山崎は日本人の「日本食」に慣れた舌にも優しい味わいですが、宮城峡はそこまで日本人の舌に合わせている訳ではなく、スコッチのシェリーカスクに迫るコシとコクが持ち味でバニラ香も強くブランデーやチョコレートのような味わいを持っています。


ちなみに「シングルモルト」とは一箇所の蒸留所で蒸留〜熟成されたモルトウイスキー(大麦だけで作られたウイスキー)のことを言います。
宮城峡は宮城県仙台市にあるニッカの宮城峡蒸留所で作られたモルトのみを使用しています。サントリー山崎は大阪府山崎蒸留所のモルトです。

何箇所かの蒸留所のモルトをブレンド(バッティング)して作られたウイスキーは「ピュアモルト」と言います。ニッカの場合、余市と宮城峡をバッティングして作られた「竹鶴」がそれに当たります。
なぜこんなことをするのかというと、ウイスキーは蒸留所によってまったくできるお酒の味や個性が違うからなのです。
個性の違う蒸溜所のお酒をブレンドしてさらに美味いウイスキーが出来上がります。
ニッカ「竹鶴」は「余市」のスモーキーフレーバーやパンチと、「宮城峡」のフルーティさを兼ね備えた素晴らしいウイスキーです。

シングルモルトやピュアモルトではないウイスキーは「ブレンデッド」と呼ばれます。これはモルトウイスキーの他に、グレーンウイスキーと呼ばれる、とうもろこしなど雑穀で作られたウイスキーをブレンドします。
スコッチなら「オールドパー」や「ジョニーウォーカー」ジャパニーズなら「スーパーニッカ」や「サントリーオールド」がそれに当たります。

モルトは味が強く濃いウイスキーになりますが、その分クセも強くなります。
ブレンデッドはスッキリとした味わいと、馴染みやすい「薄さ」が持ち味になります。
元々グレーンウィスキーはモルトウイスキーよりも効率良く安く作られる「混ぜ物」として存在していましたが、現代ではどちらが優れているとか高級とかそういう事ではなく、嗜好性の違いで分けられています。中にはグレーン100%のウイスキーもあります。

しかしやはりウイスキーの本来の美味しさや個性をわかりやすく味わいたいのなら、やっぱりモルトが適しています。
モルトは例えば焼酎以上に、銘柄による個性があります。焼酎なら芋と麦の個性ははっきりしていますが、モルトウイスキーの場合、同じ大麦を使っていながらその違いは芋麦どころか日本酒とワインほど違うことも少なくありません。
宮城峡はそのモルトの個性、違いが特にはっきり分かるお酒だと思います。


ところでワインがそうであるように、ウイスキーもヨーロッパの料理の味覚にある程度慣れてないと美味いと感じられない人もいるかもしれません。

本場のフレンチやイタリアンを誰でも気軽に食べられるようになったのが1980〜90年代、その頃にやっと日本にもカベルネ・ソーヴィニオンなどフルボディの赤ワインやヴィンテージが定着しました。それまでは日本料理に合わせた若い白ワインやロゼが好まれていました。

ウイスキーは料理と合わせるお酒ではないのでワインよりは神経は使わずに済みますが、それでもやはり単独で味わうには嗜好性の敷居はやや高いかもしれません。

それで長いこと水割りやハイボールという、ウイスキーの味をより薄めた飲み方が定着しました。
しかしウイスキーの味を一度知ってしまうと、水割りやハイボールではどうしても物足りなくなっていきます。

宮城峡もそんなお酒の一つで、もしも宮城峡をじっくり知るなら、トゥワイスアップ(ウイスキーと常温水1:1)がおすすめです。慣れてきたら徐々に水の量を減らして味わって見て下さい。バニラの香りやフルーツのような華やかな味がよりはっきりと分かるようになるでしょう。マリアージュにはぜひチョコレートを。

もっともワインと違い、それほどスノッブになる必要はありません。ウイスキーは自由です。
水割りやハイボールが美味しいと思ったら、そうして飲んでも間違いではありません。

宮城峡は、これまでウイスキーをニガテにしていた人にとっても、きっと新しい世界を広げてくれることでしょう。

宮城峡
種別:シングルモルト
原産国:日本
容量:500ml
度数:43%
熟成:ノンエイジ(3〜5年?)
樽:ウイスキー、シェリー

2015年1月15日木曜日

MacBaren Virginia Flake


マクバレン・ヴァージニア・フレーク
使用葉:バージニア
原産国:デンマーク
価格:1800円/50g(2015)


年末、ストックが底をつきかけていた事を気にかけながらなかなか時間が取れずにいたが、やっと合間を縫って行きつけのタバコ屋さんへ。とりあえず小さめの缶/フレーク/バージニアの3条件で引っ掴んできたのがこれ。買ってからマクバレンのロゴに気づいた。


開缶すると非常に整ったフレークが並んでいる。明るい色のバージニア。ブラウンとオレンジのブレンド。乾燥気味。
バージニア特有の芳香…いや、もう少し蜂蜜か洋酒か何かでうっすらとケーシングしているような、ピースにとても近い香り。

とりあえず4つ折りにしてパイプにねじ込む。薄くて整っているので、標準的なサイズのパイプで一枚すっきり収まる。
火付き、火付とも非常に良い。


序盤、クセのない素直な香り。ヘイ(干し草)タイプ…というよりシガレット葉をパイプに詰め込んで喫っているような感覚に近い。
中盤、微かにあったはずの甘味が消えている。味がなく喫っているうちに自分がバージニアを喫っていた事を忘れていることに気づく。
終盤、これといったクライマックスもなく終了。

非常にシンプルである。マイルドで喫いやすい。その分味もアロマも薄い。取り立てて欠点はない。かといって特徴もない。捉えるべき個性が見当たらないのだ。全てが中庸。ヴァージニアと銘打っていながら、ヴァージニアの甘さやクリーミーさを味わうには若干のキャラ不足という面は否めない。
あるいはパイプ葉らしいクセがニガテな人やシガレット常喫の人にとってはこういう選択肢もありかもしれない。
いや、逆に考えよう。たまに喫いたくなるシガレットの紙臭さがどうしても馴染めないなら、この葉はおすすめ。

パイプやフレークが初めての人にとっても火付きの良さや扱いやすさという点でいい。ただ同社にはこれより500円以上も安い価格でVirginia No.1というポーチの葉があって、そちらもまた取り立てて個性のない葉ではあるけれどコストパフォーマンスのいい葉が控えているので、どうもこのフレークは輪郭のはっきりした決め手に欠けるようではある。

舌焼けの危険性は中程度。合う飲み物はコーヒー、紅茶、水。

  1. 生葉芳香 弱←○○○○★○○○○→強
  2. 甘  み 弱←○○○○○★○○○→甘
  3. 味の濃淡 淡←○○★○○○○○○→濃
  4. 熟成感  若←★○○○○○○○○→熟
  5. アロマ  淡←○★○○○○○○○→濃
  6. 満喫感  弱←○★○○○○○○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○○○○★○○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○○○○★○→良
  9. 常喫可能 無←○○○○★○○○○→有
  10. 個  性 弱←○○★○○○○○○→強

2015年1月12日月曜日

SamuelGawith Kendal Cream Delux Flake


サミュエルガーウィズ・ケンダルクリーム・デラックスフレーク
使用葉:ヴァージニア、バーレー
原産国:イギリス
価格:1900円

2015年最初に開封したのがケンダルクリーム。幕開けにふさわしい素晴らしい葉。

葉様は分厚いフレーク。香りは一言で言えば「生八ツ橋」。つまりは香りづけに少なくともトンカビーンズとシナモンが使用されていることは間違いない。さらにバニラの香りもほんのりするが、バニラそのものではなくラムやウイスキーのカスク香に近い。

火付きにはやや工夫が要るが、フレークがややブロークン気味なので極力フレークのままねじ込んで味わいたい。一度安定してしまえば火持ちはそう悪くない。フレークが厚く大きいので、パイプもボウルの大きめのものを選びたい。標準的な19mmボウルなら半分ぐらいでちょうどいい。

序盤、ねっとりとした煙とほんのりと甘いヴァージニアの喫味が心地よい。アロマはトンカビーンズのフレーバーがもわっと鼻腔を包む。時折きのこのような、山菜のような不思議なアロマが顔を覗かせる。

中盤、クリーミーさが出てきてケンダル「クリーム」の名前に得心のゆく味わい。サミュエルガーウィスの葉を味わう幸福を感じる。サミュエルガーウィスの葉でバーレーがブレンドされているものはこれ以外に味わった事がないが、元々バーレーがあまり好きでない僕でも素晴らしいと感じる。木の香りと華やいだ草花に包まれたような香りが交互に来た後で葉巻のようなアロマとルームノートが顔を覗かせ心地良い。

終盤、ややキックが強くなるが、濃厚でクリーミーな喫味は変わらない。バター、ナッツ、ブランデーケーキのようなこってりとした喫味と、それにも増してふくよかで複雑なアロマに酔いしれているうちに終了。満足感がかなり深い。

この葉は、他メーカーのどんな葉にもあまり似ていない。全体的なニュアンスは同社の1792フレークが一番近いが、パンチのある1792に較べてずっと洗練されていて、かつマイルドにも関わらず、アロマはより深くたっぷりとしていて底付きがない。

明らかにパイプ上級者のためのtobaccoで、喫う度にいろんな発見をする。本当にリラックスしたい夜に、好きなお酒と一緒にゆっくりと味わいたいtobaccoだと思う。

時間帯は夜〜深夜。合う飲み物はウイスキー、ブランデーなど。ニコチン酔いの可能性はややあり。舌荒れの可能性は低い方。

  1. 生葉芳香 弱←○○○○○○★○○→強
  2. 甘  み 弱←○○○○○★○○○→甘
  3. 味の濃淡 淡←○○○○○○○★○→濃
  4. 熟成感  若←○○○○○○★○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○○○○★○→濃
  6. 満喫感  弱←○○○○○○★○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○★○○○○○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○★○○○○→良
  9. 常喫可能 無←○○○○★○○○○→有
  10. 個  性 弱←○○○○○○○★○→強