パイプスモーキングの醍醐味は様々な個性のtobaccoの味わいが楽しめることです。
あまりに種類が多く、味わいや特徴が忘却の彼方に消えてしまったものも多々あり
自分の備忘録のためにテイスティングノートをつけ始めました。

パイプ葉は個人の嗜好性や飲み物、時間帯、体調、パイプによってもかなり変わります。
なるべく主観に流れないように書くよう注意は払っているつもりですが、あくまでも参考程度にされてください。お役に立てれば幸いです。
ついでにシガーやRYO、ウイスキーについても少し触れています。

2016年12月8日木曜日

Rattray Dark Fragrant


ラットレー・ダーク・フラグラント
使用葉:ブラックキャベンディッシュ、ペリク
原産国:ドイツ(UK OEM)
価格:4500円/ 100g(2016)

ちょっと前まではなかなかお目にかかれなかったラットレーの銘柄が、相次いで国内のカタログラインナップに加えられたようです。

僕もこのところはブラック・バージニア(Black Virginia)やアカウンタンス・ミクスチュア(Accountants Mixture)、そして定番のオールド・ゴーリー(Old Gowrie)と、ラットレーばかりを愛用しています。

このうちブラック・バージニア(Black Virginia)については次の機会に印象をここで書きたいと思っています。


今回はダーク・フラグラント(Dark Fragrant)。

ラットレーと言えば、上質なバージニアを主体とした葉の旨さがなんとも言えません。
その中でもマーリン・フレーク(Marlin Flake)は、その上質なバージニアとキャベンディッシュ、ペリクのバランスが絶妙で、常喫葉としては本当に上質です。

ちょっと乱暴な言い方になりますが
オールド・ゴーリーはマーリン・フレークからブラックキャベンディッシュを抜いたもの
対して今回のダーク・フラグラントは、バージニアを抜いたもの…と表現できそうです。

文字通り、香りがやや強い、黒いキャベンディッシュが主体
そこに僅かのペリク(希少なtobacco葉の漬物のようなもの)を加えています。
葉様はフレークで、あまり細かくはなく、ひらたく丸みを帯びた形状です。


生葉の香りは、レーズンのような芳香。
これはキャベンディッシュにアプリコットか何かのフルーツを使用しているからのように思われます。
僅かにバニラの香りもするけれど、バニラ加香はされているかどうかは分かりません。

火着き火持ちは開封直後でも申し分ありません。
アロマはずしっと重く、バーなどではルームノートに気を使いそうですが、着香のそれとは違って嫌味はないので、パイプやシガーに慣れた人であれば気にはならないでしょう。

喫味は序盤からとても甘いです。これも人によって変わるとは思いますが、イギリス葉に慣れた人にとって「甘い」と感じる甘さで、tobacco本来の熟成された甘さといえるでしょう。

冬になると、バージニアオンリーの葉が段々辛くきつくなってくるのですが、それに反比例するように、ブラックキャベンディッシュ主体の葉がとても味わいを増してきます。

まさに冬のよく温まった暖かいリビングにピッタリの一品。

合う飲み物は、紅茶、シェリーなど。
時間帯は夜。





2016年5月13日金曜日

Dunhill My Mixture BB1938



ダンヒル・マイミクスチュア・BB1938
使用葉:ヴァージニア、ラタキア
原産国:イギリス
価格:1750円/50g(2016)

昨年暮れあたりから日本国内でも見かけるようになったダンヒルの新製品です。が、大元は戦前から存在しやがてダンヒルのtobacco撤退で消えたBaby'sBottom というミクスチュアの復刻版です。
残念ながらBaby'sBottomを味わった経験がないのでオリジナルとこの復刻版的BB1938がどう違うのかは分かりません。



生葉の香りは鮮烈なラタキアとヴァージニアのハーモニーです。それ以上でもなくそれ以下でもない、しかし実に心地の良い爽やかなものです。

喫味は終始軽く爽やかです。
いや、それはダンヒルのド定番、マイミクスチュア965との比較でのことです。
缶のデザインが良く似ているので、否応なく比較してしまいますが、傾向は似ているようでだいぶ違う方向性を向いています。

例えば965のむせかえるような複雑なアロマはありません。ガツンと来るバイトやまとわりつくようなオリエントの絡みもありません。その代わりラタキアのスパイシーなアロマとヴァージニアの爽やかな甘味が強調され、くっきりしたコントラストと単純明快で分かりやすい素性を持っています。

火付、火持ちとも申し分なく、序盤から薄めですがヴァージニアの爽やかな甘みとラタキアの薫香を存分に味わうことができます。そして後半に行くに従ってふくよかな風味が増してゆきます。


この葉の最大の美点は、ドローアンドブローに全くと言っていいほど気を使わなくて済むというところでしょうか。
大きなボウルでも小さなボウルでも、ぞんざいな喫い方をしても用心深く喫っても、味が大きく変わることがないのです。

個人的にはこれからイングリッシュミクスチュアやラタキア入りの葉を始めてみようと思う方に最適と思うと同時に、ベテランにとっても常喫葉としても全く申し分のない実にシンプルで飽きの来ない軽いキャラクターを持った葉だと言えると思います。
MM965がややクラシカルなイングリッシュミクスチュアだとするなら、このBB1938は例えばマクレーランドのようなより現代的で軽やかさを強調した葉だと言えるでしょう。
ニコチン酔いの心配も、舌荒れの危険性も殆どありません。

もしも965と同様に手軽に街のタバコ屋さんで手に入るなら、「とりあえず」の定番として常備しておく価値はあります。

良いtobaccoです。

2016年3月18日金曜日

Cornel&Diehl Star of the East Flake



コーネル・アンド・ディール・スター・オブ・ザ・イースト・フレーク
使用葉:ラタキア、オリエント、バージニア
原産国:アメリカ
価格:2600円/56g

難しいtobaccoです。
そして個性的でとても味わい深いtobaccoです。

缶を開けると真っ黒なブロークンフレーク(フレークをほぐしたような状態)が現れます。
とにかく真っ黒です。そして非常に脆いのです。


とにかく黒く脆い。
指でつまみ上げると、ちょっと力を入れただけでモロモロと崩れてきます。
こんなに脆くていいのでしょうか。
うまくやらないとパイプが詰まってしまいそうです。

脆いので一見乾燥しているように思いますが、開封してからしばらく外気にさらしておいた方が火持ちは良くなります。
その乾燥がまたさらにフレークをモロモロにしてしまうのですが。

香りは酸味の強い発酵臭。
ラタキアが50%程度入っているとのこと。

注意深くボウルに詰めていきます。
詰め方は、なるべくゆるく、タンパーは使わず縦にフレークが並ぶようにするとうまくゆっくり燃えてくれます。隙間はピックで調整します。

序盤、ラタキアらしさはそれほどではありません。
粉っぽい渋み。
アメリカンブレンドに共通の、淡白さと辛味の少なさ。

ですが、スパスパやっていると突然舌を刺激するバイトが出てきます。
火が安定してきたら、なるべくスロースモーキングに徹します。
お手本のようなブローアンドドローが必要です。

そうすると次第に味わいが出てきます。
爽やかな甘み、ミント、コーヒーのようなコク、熟したワイン、トースト……。
いろんなヒントが出てきます。
それは喫い方によって、また喫う度に違う印象があります。

ラタキアらしさが出てくるのは中盤以降、次第にアロマにそれが現れます。
しかしそれはラタキアを主張するのではなく、極端にストーブされたオリエントとヴァージニアの下支えとして、ベースラインに徹しています。
あくまでも主体は喫味です。

燃え方は非常にゆっくりです。
ゆっくりでないとうまく喫えません。
そしてバイト(舌荒れ)が起きます。


このスターオブザイーストフレークは、あらゆるフレークに飽きた人に最適です。
ビギナーはおそらく寄せ付けないでしょうけれど
長年パイプに親しんできた人にとってはとても美味いtobaccoと感じられるでしょう。
じっくりとパイプと向き合える、新しいタイプのアメリカンブレンドのように思います。

サミュエルガーウィズにBlackXXという極めつけの葉(縄)がありますが、それとは味わいもニュアンスも全く異なりますが、「なんじゃこりゃ度」と征服感には似たものがありそうです。甘みがある分、こちらのほうが親しみやすいでしょう。

ニコチン酔いの心配は少ないですが、バイトに注意。
それとタンパーでがしがしやるとあっという間に煙道が詰まるのでそれも注意。

合う飲み物はウイスキーやコーヒー。


2016年2月17日水曜日

Mc Clelland Rose of Latakia



マクレーランド・ローズ・オブ・ラタキア
使用葉:ラタキア、オリエント、ヴァージニア
原産国:アメリカ
価格:¥2,500/50g





缶に書かれた説明によると「ラタキアの薔薇」とは、シリア産のラタキアの中でもっとも上質なものに名づけられた名称だということです。

さて、今日の深刻なシリア情勢においてシリア産ラタキアが果たして手に入るものなのでしょうか。
この葉にシリア産のラタキアが使われているかどうかはわかりません。

どちらにしても、ラタキアのことを考えるまでもなく、一日も早くシリアに平和と安寧が訪れますよう、心から祈るばかりです。

産地はともかくローズオブラタキアにラタキアが使われていることだけは確かなようです。ただし、ラタキアミクスチュアと思って喫うのは早合点のようです。




開封すると褐色の、典型的なほぐれたリボンカットが現れます。
生葉はドライフルーツ、チェリーのような香りがします。
しかし上品で軽やかです。
ラタキア臭さは全くありません。

火付き、火持ちはとても良く、序盤からほんのり甘い喫味が口の中を支配します。
ラタキアの特徴は殆ど感じられません。アロマも強くなく、淡々とした柔らかいスモーキングタイムが過ぎてゆきます。

総じて思うのは
「ラタキアの感じがない」
です。
オリエントのしつこさもない。
さらさらしている。

終盤に差し掛かっても喫味は変わらず、軽い印象が続きます。
明るい日差しの中、どこまでも続く道をドライブしているような感覚です。
それは変化に富んでるわけでもありませんが、決して退屈な訳でもなく、時折ゆっくりとうねるようなドライブ感と持続感が心地よいのです。
ルームノートも良い印象で、穏やかでほのかな花のような香りがすっと引いていく感じです。

この葉は「ラタキア入り」や「イングリッシュミクスチュア」として括るのはやや無理があるように思います。
むしろ「アメリカンミクスチュア」として向かい合った方が良いかもしれません。
マクレーランドのtobaccoはそういった良い意味でのアメリカ風の個性を持っており、この葉はその典型です。
軽やかさ、明るさ、甘さ、全てが優しく、そしてオーガニックな印象を受けます。

常喫葉としても申し分ありませんが、コスト的には安いとは言えないのが残念です。
イギリスやヨーロッパ風のキャベンディッシュがやや重いと感じる場合にはかなりおすすめの葉です。




2016年2月9日火曜日

Robert McConnell Old London Pebble Cut



ロバート・マコーネル・オールドロンドン・ペブルカット
使用葉:オリエント、ペリク、ヴァージニア
原産国:EU(ブランドはイギリス)
価格:4100円/100g

2014年版のカタログを見ると、ブランドはAshtonになっています。
僕が購入したのはRobert McConnell。
どちらにしてもマクレーランドが製造していると思われます。
この辺の事情は詳しくないので詳細はわかりません。
そんなわけで、いつもながらの見たまま、喫ったままの感想です。

ペブルカットというのは、長い状態のブロークンフレークのようなもので、帯状に圧縮された葉が束ねられて缶に入っています。


これをちぎって、手で揉みほぐしてパイプに詰めるわけですが、サミュエルガーウィズのフレークなんかに比べると圧倒的にほぐしやすくて火付きもとても良好です。

生葉の香りは特別個性があるわけではなく、ほのかなプンパーニッケルの香りはしますが、それほど強くはありません。

火持ちもとても良く、ほぐさずに丸めて喫っても火持ちで苦労することはまずありません。

この葉は、アロマよりも喫味、前半より後半に特徴があります。

まず出てくるのはオリエント特有の濃厚なキックです。まとわりつくようなオイリーな香りと喫味。
ややスパイシーな辛味もありますが強くはありません。
後半になるに従って甘みとこってり感が増してきます。
これはペリクが作用しているかもしれません。
ペリク自体の主張は強くなく、本当にオリエントに深みを与えている程度だと思います。

とても「旨い」tobaccoです。
そして飽きが来ない。
パイプや喫い方でいろんな味に変化する、奥の深い味です。

ただ惜しいのは、これだけ濃厚でスパイシーなのに、ラタキアの影が全くないことです。
まあ、それはブレンドのコンセプトであって、ラタキアが入ってなければダメだということでは決してないのですが、これだけ奥行きがあるとどうしてもラタキアのアロマが欲しくなってしまいます。

それで僕は手持ちのラタキア葉を少しだけ混ぜることにしました。
そうするとみるみるアロマに広がりが出てフルテイストに変化していきました。
喫味に広がるオイリーさと甘みが、ラタキアのアロマで倍増した感じです。

クライマックスは後半、常喫葉としても申し分ありません。
コストパフォーマンスもこの手の葉にしてはまあまあです。

例えばラットレーのオールドゴーリーやマーリンフレークを喫い慣れた人にとってなら、この葉は代わりとして十分に好ましい味わいを提供してくれることでしょう。





2016年1月20日水曜日

Rattray's Accountant's Mixture



 ラットレー・アカウンタンツ・ミクスチュア
使用葉:ヴァージニア、ラタキア、ブラックキャベンディッシュ
原産国:ドイツ(ブランドはイギリス)
価格:4500円/100g 


スムーズ&マイルドなバルカン

前回紹介したばかりのラゴンダが国内取扱中止になってしまいました。
素晴らしいブレンドだったので本当に残念です。
代わりになる葉を探していたら、この「アカウンタンツ・ミクスチュア」を薦められました。
「会計士のミクスチュア」
なんのこっちゃです。

素性は標準的イングリッシュミクスチュアです。
ただラタキアのクセは抑えられ、生葉の香りはブラックキャベンディッシュとのハーモニーでとてもマイルドで爽やか、好感の持てるものです。
とても濃い色のリボンカット。

喫味もとてもマイルドでスムーズです。どことなく物足りなさを感じながら、気がつけば一気にワンボウル終了。満喫感も舌焼けもなく、2ボウル目。

いつもなら鼻腔を刺激するラタキアのアロアも、「もっとあってもいいな」と思わせるマイルドさです。

ただ、決して味気ないわけではなく、ほんのりとした甘みの中から単なるラタキアタバコとは違う独特のアロマと後味が次第に浮かび上がってくるのです。それはおそらくブラックキャベンディッシュのブレンドのせいでしょう。
薄いは薄いのですがしっかりした土台の支えは感じます。安易な感じは全くしません。

パイプ喫煙の場合、ドロー(吸い)の他にブロー(吹き)も重要な要素になります。
特にアロマを楽しむタイプの葉ではブローは欠かせないものです。
アカウンタンツもこのブローを意識的にすることで、より味わい深いアロマを楽しむことができると思います。

ラットレーの代表的なリボンカットミクスチュアには他に「セブンリザーブ」「レッドラパリー」「ブラックマロリー」があります。
「アカウンタンツ」はこの中でレッドラパリーに非常によく似た喫味を持っていますが、さらにマイルドでほんのり甘みを加えた感じになっています。

惜しいのは、価格と燃えの速さでしょうか。
特に価格は、ラットレーはどれも高め設定です。常喫にいいなと思わせる葉が多いだけにコストパフォーマンスの低さが残念です。

燃えの速さというのは葉の乾燥状態や葉組にもよりますが、カットが細やかで薄い葉を多く使用していると、火付きや火持ちが良い代わりにあっという間にボウルが終わってしまいがちです。アカウンタンツも全般的に葉様がとても薄いのです。
この葉様の薄さが燃え方を速め、奥行きを味わう前に終わってしまう要因の一つになっていることは否めません。

楽しめる時間帯は終日。いつでもさほど変わらない風味を満喫できるでしょう。パイプとじっくり向き合うのではなく、何かの作業をしながらインターバルにパイプに火をつけるというつきあい方が向いています。

とここまで書いて、「会計士のミクスチュア」の意味が何となく分かったような気になりました。