パイプスモーキングの醍醐味は様々な個性のtobaccoの味わいが楽しめることです。
あまりに種類が多く、味わいや特徴が忘却の彼方に消えてしまったものも多々あり
自分の備忘録のためにテイスティングノートをつけ始めました。

パイプ葉は個人の嗜好性や飲み物、時間帯、体調、パイプによってもかなり変わります。
なるべく主観に流れないように書くよう注意は払っているつもりですが、あくまでも参考程度にされてください。お役に立てれば幸いです。
ついでにシガーやRYO、ウイスキーについても少し触れています。

2015年2月25日水曜日

初号ハイニッカ復刻版




ニッカの復刻版を手に入れました。
今回はハイニッカです。
またしても発売初日です。
マッサンの放映もたけなわ、ニッカ(アサヒ)も便乗していろいろ頑張ってくれて嬉しい限りです。

現行ハイニッカ
ハイニッカは元々「ウイスキー二級」として1964年に発売されました。
今は酒税法が変わって等級は廃止されましたが僕が酒を覚えたての頃にはまだ存在していて、要するに普及版のウイスキーでした。
ウイスキー二級というと、サントリーならトリスやレッドがそれに相当しますが、ハイニッカの美味さというかウイスキーらしさはちょっとそれらとは比べ物にならない特別なところがあって、まさしくスコッチの並み居るブレンデッドを凌駕するような酒です。

そのハイニッカ、1980年代後半にモデルチェンジしています。味はライトで香りも若干弱いところがありますが、程よいピート香、パンチ、キレ、何杯でもおかわりできてしまう余韻を持っています。

ただこれだけの味わいを持ちながら、現在ハイニッカは殆どのスーパーやコンビニ、小さな酒屋ではまず手に入りません。ハイニッカはやがて消えてゆく運命にあるお酒のようにも思えます。というのも現在はブラックニッカクリアがあります。このクリアはノンピートでありながら結構コクのある味わいを持った良いウイスキーで、しかも破格の安さでかつてのハイニッカが担っていた棚をすっかり奪ってしまったからです。

そんなハイニッカの復刻版、まず香りで笑ってしまうのですが、もちろんウイスキーの香りもしますがそれを凌駕するウォッカや甲類焼酎の匂い。良くも悪くも懐かしい(笑)
現行ハイニッカはこんな匂いはしません。ブラックニッカクリアは少しだけするかな。

これは現行ハイニッカが「カフェ式グレーン」をブレンドに使っているのに対し、初期のハイニッカはブレンド用に(他メーカーのウイスキーが軒並みそうであったように)ほぼスピリッツに近いグレーンを使用していたからという事実に基いての事とは思いますが…何もここまでバカ正直に再現しなくても…。

まあ、でもサントリーがマッサン人気にまさしく便乗で、現行ホワイトの中身そのままにラベルだけ「白札」に変えるだけの「ナンチャッテ復刻」をしてるという現実を思えば、逆にニッカは今も昔も本当に真面目な会社なんだと思います。

そんなわけで正直に言って、現行ハイニッカよりウイスキーとしての香りの質は落ちてしまっています。でも不思議とそのスピリッツ臭さがキライじゃない(笑)そして余韻にはちゃんとバニラも(ほのかではありますが)出てくる。

そして味わいは逆に現行ハイニッカよりも濃い印象があります。余市原酒特有のきっちりとしたスモーキーフレーバーと潮味、パンチが効いて実にリッチです。そして若干の甘みさえ感じます。当時の二級酒の13%上限という限定されたモルト比率の中でウイスキーらしさを追求しようとすれば、自ずとスモーキーでリッチフレーバーなモルトを使う事になったことでしょう。

実際、香りを除けば決して安っぽさは感じさせない男らしいウイスキーです。
二杯、三杯とグラスを重ねるうちに、「あ、そうだ。ニッカというのはこうだったなあ」と段々思いだしてきました。
ウイスキー好きを唸らせるに必要十分な要素を持っていながら、同時に初心者を寄せ付けない気難しさを持っている。阿りが一切ない代わりに一度ウイスキーの味を覚えた身にとっては堪えられない深い味わいと個性。
故に理解されず、そんじょそこらの酒屋では手に入らないという販売力の弱さ。

そう考えると、今コンビニに並んでいるブラックニッカクリアの分かりやすさ、優しさはニッカのイメージをガラッと変えたのかもしれません。

飲み方は、ストレートかロックでしょうか。水割りにするとウッディな香りも立ってきますが味は若干アルコール臭い苦味が目立ってきます。この辺も初心者向きじゃないなあ。

最近はモルトの濃い味や香りに慣れてしまってますが、ウイスキーの良し悪しはシングルモルトよりも味の薄まったブレンデッドに大きく出ます。

ハイニッカは現行版も復刻版も、同価格帯の普及版ブレンデッドスコッチ、バーボン、ブレンデッドジャパニーズの中では、本当によく古き佳きブレンデッドウイスキーの味を守っている気がします。特に昨今ではスコッチの普及版ブレンデッドの品質低下が著しい故に、相対的にその評価は上がっていると言っても良いのではないでしょうか。

願わくば、現行ハイニッカの復権を。
(角なんかよりずっと美味いんだから)











2015年2月18日水曜日

Rattrays 7 Reserve



ラットレー・セブン・リザーブ
使用葉:ヴァージニア、ラタキア、オリエント、ブラックキャベンディッシュ
原産国:ドイツ(イギリスブランド)
価格:2250円/50g(2015)




先述のレッドラパリーと同じ葉組のミクスチュア。でカタログ等では「レッドラパリーより軽め」と書いてある。

けれども僕の印象は決して軽いtobaccoなどではなく、太くて深いtobaccoだった。

葉様はやや乾燥気味のリボンカット。香りはヴァージニアとややツンとした酸味のキャベンディッシュの香り。ラタキアの薫香ももちろんするがキャベンディッシュにまぎれている様に感じる。


火付き、火持ち共に全く申し分ない。
序盤、ヴァージニアの甘みがしっかりと来る。レッドラパリーで目立った青臭さや煙たさは全く感じない。しかし青臭さや煙たさは本来ヴァージニアから出てくるはずのもの、喫味から言っても7 Reserveの方がヴァージニアの割合は多いはず。レッドラパリーのあのヘイタイプっぽさは何が原因だったのだろう。

中盤、甘みに加えてこってりとしたオリエント特有のオイリーなアロマが主張し始める。クライマックスはこの中盤だと思う。アロマはオリエントだけではなく、キャベンディッシュのやや熟成気味の酸味がいいアクセントになって、より深いリラックスに誘う。

そこで初めて気づく。レッドラパリーと7 Reserveの味の差はオリエントにあると。
7 Reserveのしっかりしたオリエントのオイリーなアロマとナッティな喫味が、ヴァージニアとラタキアをがっちりと押さえて抑制の効いたものに仕立てあげている。

終盤、アロマがどんどん深くなる。オリエントのしつこさはあるがブラックキャベンディッシュとのハーモニーがとてもよくラタキアの薫香を深いところで響かせている。名残惜しさ、余韻を残して終了。

燃えは速いが味はゆったりと燻らせられるイングリッシュミクスチュアの典型。個人的に線が細くパイプ感の薄いレッドラパリーよりも線が太くアロマに奥行きを感じることができる 7 Reserve が好み。

ダンヒルのマイミクスチュア・965やサミュエル・ガーウィスのパーフェクションを思い出させる味でもある。

ニコチン感はレッドラパリーより強めで満喫感は大きい。
舌荒れの心配はややあり。時間帯は夜。合う飲み物は水、ウイスキー。

  1. 生葉芳香 弱←○○○★○○○○○→強
  2. 甘  み 弱←○○○○○★○○○→甘
  3. 味の濃淡 淡←○○○○○★○○○→濃
  4. 熟成感  若←○○○○○★○○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○○★○○○→濃
  6. 満喫感  弱←○○○○○★○○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○○○○★○○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○○★○○○→良
  9. 常喫可能 無←○○○○○○○★○→有
  10. 個  性 弱←○○○○○★○○○→強


2015年2月14日土曜日

Samuel Gawith Squadron Leader Tobacco




サミュエル・ガーウィズ・スクアドロン・リーダー
原産国:イギリス
使用葉:ヴァージニア、オリエント、ラタキア
価格:1900円/50g(2015)

とても爽やかでいながら濃い味わい、そしてリッチなアロマを持つtobaccoだ。味の中心となるのはヴァージニアの甘みとオリエントのコク。ラタキアは生葉の芳香とアクセント。

前回に書いたラットレー・レッド・ラバリーに較べるとはっきりした個性を持つ。
それはサミュエル・ガーウィズの全てのtobaccoに共通するのだが、深く濃いフレーバーと、爽やかでキレの良い甘みが同居しているところ、そしていつまでも包まれていたいと思わせる絶品のアロマだ。

生葉はやや大きめのりボンカット、ラタキアとオリエントの芳香、そして若干のリコリス風の香り。同社の他のミクスチュアにも時々ある、自然な甘い香り。

ややモイストな葉だが、火付、火持ち共にとても良い。
序盤、爽やかな甘みがとても美味い。ややメントールにも似た爽やかさ。しかしそれに反してアロマはオリエント特有の濃くてまとわりつくようなリッチなアロマが延々と主張する。
中盤、味、アロマ共に深みを増してくる。バター。
終盤はさらに少し熟成の進んだワインのような複雑な渋みとスムーズさ、そしてオイリーなとろみが強くなる。

味の爽やかさ、キレの良さに似合わずややリッチ&ストロングなところがあるのでニコチンに弱い人はやや注意。僕も2ボウルぐらいになると若干お腹いっぱいになる。実際のニコチンの量はさほどでもないとは思うので、オリエント特有のバターのようなアロマに酔うのかもしれない。舌焼けの心配は少ない。

一言で表現すれば、オリエントをしっかり味わいたい時のtobacco。しかしそれだけでなくラタキアで締めるところは締め、そしてヴァージニアの甘さもしっかり味わえるなんとも贅沢なtobaccoなのだ。

合う飲み物はウイスキー。時間帯は夜〜深夜。

  1. 生葉芳香 弱←○○○○○○★○○→強
  2. 甘  み 少←○○○○○★○○○→多
  3. 味の濃淡 淡←○○○○○○★○○→濃
  4. 熟成感  若←○○○○○★○○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○○○○★○→濃
  6. 満喫感  弱←○○○○○○★○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○○★○○○○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○○○○★○→良
  9. 常  喫 無←○○○○○○★○○→有
  10. 個  性 弱←○○○○○○★○○→強




2015年2月11日水曜日

Rattrays Red Rapparee



ラットレー・レッド・ラパリー
使用葉:ヴァージニア、ラタキア、オリエント、ブラックキャベンディッシュ
原産国:ドイツ(イギリスブランド)
価格:2250円/50g(2015)



ラタキアの薫香を中心にした典型的なイングリッシュミクスチュア。一言で言えば、ダンヒルのマイミクスチュア965に似た味わいを持っているが、それよりはややあっさり目で少しアーリーモーニング寄り。

葉様はやや乾燥気味のリボンカット。香りはラタキアが目立つが、それほど強い訳ではなく、ラタキアがニガテ気味の人にも好感が持てると思う。
火付き火持ち共に良く全てにおいて意識せずに済み、常喫葉としての端正な素性が感じてとれる。

ただ、僕があまりにサミュエルガーウィズの分かりやすさに慣れてしまったのか、今ひとつこの葉について多いに語るべきモチベーションを高めることができないまま、缶を空にしてしまった。

なぜなのかしばらく考えた挙句、それがこのレッドラパリーの「イングリッシュミクスチュアらしさ」と「タバコらしさ」にあるのではないかという結論に至った。

ラタキアとヴァージニア中心に組まれたミクスチュアの持ち味はあくまでも自然で典型的だ。ヴァージニアでありながら甘みは少ない。脇役としてのオリエントが深みを演出する。

終始青臭さといがらっぽさがつきまとう感じはある。これを良しとするか否とするかは喫い手の嗜好性に委ねられるだろう。ラタキアでありながらヘイタイプでもあるというようなそんな評価もできるかもしれない。

しかし各社の同系イングリッシュミクスチュアの味の違いというのは、もはや微妙を通り越して個人の主観に負う方が多くなってしまう。
ダンヒルなら965やロンドンミクスチュア、サミュエルガーウィスならパーフェクションやスクアドロンリーダー、ラットレーならレッドラパリーといいうような、お決まりのミクスチュアの一つだ。好みと贔屓で選べば良いと思う。

この葉に特有の感想を述べれば「オレはパイプを喫っているゾ」という構えた感じを全く持たなくて済むというのはあると思う。僕自身も特段違和感を感じることがないままあっという間に一缶を空にしてしまった。
というのはやはりこのtobaccoが持つ素性の良さのせいに違いない。
マイルドだが舌焼けの危険性あり。時間帯は終日。

  1. 生葉芳香 弱←○○○★○○○○○→強
  2. 甘  み 弱←○○★○○○○○○→甘
  3. 味の濃淡 淡←○○★○○○○○○→濃
  4. 熟成感  若←○○○★○○○○○→熟
  5. アロマ  淡←○○★○○○○○○→濃
  6. 満喫感  弱←○○○○○★○○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○○○○★○○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○★○○○○→良
  9. 常喫可能 無←○○○○○○○★○→有
  10. 個  性 弱←○○★○○○○○○→強



2015年2月2日月曜日

サントリーのまっすぐなウイスキー 〜Suntory CREST 12〜



サントリークレスト12年
ブレンデッド

1989年、サントリー(壽屋)の90周年を記念して「響17年」と共に発売されたサントリーの高級ブレンデッド・ウイスキー。それまで「ローヤル」が頂点だったサントリーのブレンデッドウイスキーラインナップの上位、いわゆる「ブレンデッドのヴィンテージ物」として2006年まで売られていました。その後ローヤルや響にも12年ものがラインナップされたことで販売終了、今はデッドストックだけしか手に入らないと思います。

このクレストも父が長らく酒棚に放置したままにしていたもの。
父が今年家を離れ特養に入所することになったため、身辺整理の機会に譲り受けました。
といっても元々酒は一滴も飲まない人で、なのに何故かブランデーやウイスキーの贈答が多く、棚にはレミー・マルタンやカミュ、オールド・パー、ジョニ黒など、当時の高級酒が何本も何年も飾り物になっていたのでした。

僕の洋酒の先生はこれらの飾り物達でした。20代〜30代、帰省する度に惜しげもありがたみもなくこれらのボトルを我が物顔で空けてました。
父の下戸のおかげで、息子がブランデーやウイスキーの味を正しく覚えることができたと言っても過言ではありません。深謝。

クレストはその中で未開封のまま最後まで残っていたボトルのひとつでした。
発売当時の価格を見ると5000円。しかも酒税法改正後でウイスキーが安くなってからの価格ですから、国産ウイスキーとしてはかなり高級な部類です。

素性は素直で、個性はそれほどないけれどヴィンテージモルトの良さを活かした良質なウイスキーです。今となっては決して高級な感じはしません。ニッカで言うところのスーパーニッカぐらいかなあといったところ。

第一印象はサントリーの常でややグレーンのアルコール臭さが気になりますが、しばらくすればモルトの香りが開き、奥行きのあるフルーティさとキレの良い甘さが心地良いウイスキーの顔を出します。サントリーにしては例外的にピート香を感じることができ、ウイスキーらしく、ストレートでもスッキリとした味わいを楽しむことができます。そしてマスカット風味と奥行きがあり余韻もしっかりとしています。白州モルトの印象が強いです。

ウイスキー通ならブレンデッドジャパニーズの最高峰に「響」を挙げる方も少なくないと思います。クレストはその響12年に系譜的に繋がるウイスキーだと感じます(味わいは全く異なります)。
思うに、このクレストを境にサントリーのウイスキーの哲学、信念というものがかなり変化したのではないでしょうか。

サントリーのウイスキーは長年、ニッカと較べるとウイスキーそのものを味わうというより、やはり「日本料理に合うこと」「日本人の繊細な味覚に合わせる」ことを再優先にしてきた感があります。故に飲み方のメインは水割りやハイボール。

角やホワイト、オールドはそんな時代を長いこと引きずってきました。水割りやハイボールにすると美味いがストレートではとても飲めないという、誰もが一度はウイスキーに感じてきたジレンマです。
それが逆に「水で割っても腰砕けがない」という不思議なサントリーマジックも生み出したのも事実ですが。

しかし現在の山崎や響はそういったかつてのサントリーの「ご提案」は影を潜め、ウイスキーをしっかりと味わって欲しいという哲学への変化を感じます。
水で割るよりストレートの方が断然美味いのです。

シングルモルトやブレンデッドをストレートで味わえるというのは、日本人の舌が変わってきたせいもあるでしょう。
しかしそれだけではなく、やはりジャパニーズ・ウイスキー自身も変化(進化)しました。

クレストは、そんな過渡期に誕生したブレンデッドにおける初めてのヴィンテージです。当時の5000円というかなり高い価格帯やバブルの時代の雰囲気を敢えて無視して「ジャパニーズウイスキー」という括りで見れば、クレストは何の曲芸も施さず、素直で良心的なブレンドをきちんとした「普及版」ヴィンテージ・ブレンデッドではなかったかと思うのです。
あんまり普及はしなかったみたいですが。