サミュエル・ガーウィズ・スキッフ・ミクスチュア
原産国:イギリス
使用葉:ヴァージニア、ラタキア、オリエント
中野にもここ数年ショットバーがずいぶんと増えてオーセンティックを目指すところもちらほら。
そんな中のとある蔵酒の種類の多さを売りにしている小さなバーに入った時のことでした。
美味いウイスキーを二杯ほどいただいたところで気分も良くなりパイプを取り出すと、間髪を入れずにNGを出されてしまいました。
マスター曰く、換気の問題で紙巻きタバコは良いが葉巻とパイプはお断りとのこと。
もちろんにこやかに従いパイプを収めましたが「ああ、このバーはダメだな」と判断して早々に退散しました。
そのマスターはまだ若いですがウイスキーの利酒や歴史にとても拘り知識も豊富な様子。しかし基本的なことを分かっていない。
何かというとまず、タバコの中でもっとも煙量が多く空気を汚すのは、葉巻(シガー)でもパイプでもなく紙巻きタバコであるという点。
次に、酒の味と香りを濁して台無しにしてしまうのは、葉巻(シガー)でもパイプでもなく紙巻きタバコであるという点。
最後に、上質なウイスキー、特にスコッチは無煙でテイスティングするだけでなく、パイプやシガーと切っても切れない味覚のペアであるという点。
いくら酒の事を語れてもシガーやパイプのことを知らなければ、その知識は知識の牢屋から出ることはできない。
ワインと違ってウイスキーはストイックなグルメ志向や健康志向などのスノッブ感覚では何にも楽しめないものです。ワインや出汁を嗅ぎ分ける敏感な味覚のみで素人テイスティングをやってしまえば、いずれ日本で飲まれるウイスキーは山崎やボウモアばかりになってしまうでしょう。なぜアードベッグやラフロイグがあの味で長年飲まれてきたのか、このバーテンはもう少し勉強する必要があると思います。
まあ、とにかくショットバーでシガーやパイプを断られるというのは初めての体験でした。
さて、そんなウイスキーに似合うパイプ葉といえばイングリッシュミクスチュア。そしてその中でお気に入りのひとつがサミュエルガーウィズのスキッフミクスチュアです。
前に取り上げたスクアドロンリーダーととても良く似たブレンドですが、スクアドロンリーダーはほのかにリコリス系の着香があり、オイリーな中にも爽やかな後味がありましたが、スキッフミクスチュアは加香が全くされていない上にオリエントの配合がさらに多くヴァージニアが少なく、クラシカルかつハードボイルドな印象です。
生葉の香りはむんとしたオリエントとラタキアの香り、やや細かいリボンカット。
ややモイストで着火にコツは要るものの、火持ちは良好。
終始ラタキアとオリエントの主張が続きます。個人的にはラタキアがもう少し欲しいと思う事もありますが、全体的には過ぎず足りなくもなく余計な主張をせず淡々とtobacco本来の香りと向き合うことができるのは好印象です。
バルカンソブラニーの再来だと言う人もいます。僕はこれは正しい指摘だと思います。長いこと「バルカンブレンド」の定義や評判について悩んでいますが、バルカンをハードボイルドなオリエント系のミクスチュアとして見るならば、これほどミッドクラシカルな志向で常喫できるtobaccoはなかなかないのはないでしょうか。
味わいとか甘さとかヒントとかそういう小賢しい括りではなく、まとう煙の中でウイスキーと共にどんな服を着ていたら似合うのかを真剣に考える機会をこのtobaccoは与えてくれます。
しかしながらこのtobaccoはパイプ上級者にとっては到達点ではありません。
単なる道具です。
つまり「タバコなんてそんなこだわって薀蓄垂れてちまちま喫うもんじゃ無いだろ」という大雑把な事を言う男の煙が実は「正統派のイングリッシュミクスチュア」であり、着ているものは何のバリっと感もないが実は仕立てのスーツであった…という向きの常喫葉であると言えるでしょう。
スキッフミクスチュアを燻らす彼はまたこうも言うでしょう。「ウイスキーなんて、そんなポンコツなベロで薀蓄垂れてちまちま飲むもんじゃないだろ」
自戒。
合う飲み物はウイスキー、時間帯は夜。
- 生葉芳香 弱←○○○○○○★○○→強
- 甘 み 少←○○○★○○○○○→多
- 味の濃淡 淡←○○○○○○★○○→濃
- 熟成感 若←○○○○○★○○○→熟
- アロマ 淡←○○○○○○○★○→濃
- 満喫感 弱←○○○○○○★○○→強
- 舌アレ度 弱←○○○★○○○○○→強
- 火持ち度 悪←○○○○○○○★○→良
- 常 喫 無←○○○○○○★○○→有
- 個 性 弱←○○○○○○★○○→強
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