パイプスモーキングの醍醐味は様々な個性のtobaccoの味わいが楽しめることです。
あまりに種類が多く、味わいや特徴が忘却の彼方に消えてしまったものも多々あり
自分の備忘録のためにテイスティングノートをつけ始めました。

パイプ葉は個人の嗜好性や飲み物、時間帯、体調、パイプによってもかなり変わります。
なるべく主観に流れないように書くよう注意は払っているつもりですが、あくまでも参考程度にされてください。お役に立てれば幸いです。
ついでにシガーやRYO、ウイスキーについても少し触れています。

2014年12月8日月曜日

Samuel Gawith BALKAN Flake



サミュエルガーウィズ・バルカンフレイク
使用葉:バージニア、ラタキア
原産国:イギリス
価格:1900円/50g(2014)


生葉の芳香は爽やかでややピート香。カルダモンや胡椒のような芳香も感じる。ラタキア特有の香りは抑えめでバージニアのストーブの香りが勝っている。葉様はモイスト。

火付き、火持ちは申し分ない。サミュエルガーウィスのフレークの中でもSt James Flakeにもまして火持ちは良いほうだと思う。ほぐさずにフレークのまま折って捻って詰めるのが風味も壊れなくていいと思う。

序盤、スムーズ&ライト、そして爽やか。ラベルに「Deliciously Cool」とあるが芳香も喫味もクールだ。ラタキアのキャラクターはそれほど強くなくピート香に似たアロマ。スコッチを連想させる。
ほんのりとした甘みも感じるが、ラタキアブレンドの範囲内。

中盤、爽やかなスパイシーさに交じって甘みが少しづつ増してくる。アロマはそれほど個性のあるものではないが少しずつラタキアのキャラクターが増してくる。

終盤、それまで無個性に近かったアロマにラタキアの薫香と発酵香がどんどん顔を出してくる。しかしあくまでも爽やかで軽やかな甘さは失われない。いや、そもそもこれはラタキアなのか?

このレビューは初冬に書いているが夏向きのtobaccoだと思う。やや涼しくモイストな避暑地の木陰を散歩したくなるようなそんなイメージ。

ところでなぜ「バルカン」なのだろう。ネット上では「バルカンソブラニー」という伝説のtobaccoがその名付けの大元であるという情報が多い。しかしソブラニーのルーツがバルカン半島だからバルカンであるという話もあくまでも「そういうお話」であって、バルカンスタイルの理由を特定するための定説ではない。

スタイルとしてはラタキアとオリエント(主にマケドニア産)、バージニアのミクスチュアをそう呼ぶというが、そうであればイングリッシュミクスチュアの多くはバルカンスタイルになってしまうし、そもそもフレークでバージニア+ラタキアのみの「BALKAN」の説明にはなっていない。
故にバルカンスタイルの定義は未だ非常にあいまいなまま適当だ。

僕も適当なことは書きたくないので断定はもう少し調べてからにしたいが、「バルカンブレンド」という呼び名はもっと古くオーダーミクスチュアの時代に既に存在していたという不確かではあるが得心のゆく情報と自分なりの推測を元に、サミュエルガーウィズのレシピにはもっと確かで理屈の合う意図があると踏んでいる。

BALKANフレークの個性として押さえておきたいポイントとしては

  1. サミュエルガーウィズ(SG)のフレークの中でとりわけ爽やかなスパイスイメージがあること。特に胡椒やカルダモンのヒントは強い。
  2. 生葉芳香に、他のSGの葉にはない「ピート(泥炭)香」がすること。ストーブにピートを使っているのはほぼ間違いないだろう。
  3. 逆にラタキアの個性に乏しいこと。
  4. レシピにオリエントが含まれていないこと。

がある。

事実だけ見ればスパイスもピートもバルカン半島には全く関係ない。
ラベルにはエーゲ海を中心にギリシャからトルコにかけての地形があしらわれているが、バルカン半島の中心とは微妙にずれているし、ラタキアの主産地であるキプロスは表示さえされていない。
けれどもこの爽やかさとクールな味わいは確かに北のものというよりは南の風を感じるし、伝統的なイングリッシュブレンドよりはずっとオリエンタルな風味(軽さ)を醸し出している。少なくともイギリス人を含む北ヨーロッパ人が、オリエントやラタキア、スパイス風味の葉をエーゲ海のイメージに重ね合わせ、これらから醸しだされる爽やかで軽やかな個性を「バルカン風」と呼んでマイミクスチュアをオーダーした時代があったとしてもさほど不思議ではない。
それを最初にパッケージネーミングしたのがバルカンソブラニーであることはともかく、時を経てオリエント葉なしでバルカン風味を復活させるというサミュエルガーウィスの意気が込められていたとすれば……。

僕はこのBALKANに使用されている「ラタキア」と称している葉は、実はオリエント葉を使用せず(ラタキアはオリエント葉を使用する)、つまり実はラタキアではなく、ヴァージニアやバーレイを独自製法で(例えばらくだの糞の代わりにピートで)ラタキア風に仕上げたのではないか?と、これも無責任な憶測に過ぎないが、ピーティなアロマと味わいからはそんな風に読み取れるのだった。

もちろんそんな面倒な妄想をしなくても純粋に十分に美味いtobaccoだ。

ともかくも初めてサミュエルガーウィズのフレークを試してみたい人、ラタキアがニガテな人にもとっつきやすいと思う。舌荒れの心配はほぼない。St James Flakeと並んで常喫性は高い。
時間帯はデイタイム〜夜。合う飲み物はコーヒー、ウィスキー、水など。

  1. 生葉芳香 弱←○○○○○★○○○→強
  2. 甘  み 弱←○○○○○★○○○→甘
  3. 味の濃淡 淡←○○○○○★○○○→濃
  4. 熟成感  若←○○○○○○★○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○○★○○○→濃
  6. 満喫感  弱←○○○○○★○○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○★○○○○○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○○○★○○→良
  9. 常喫可能 無←○○○○○○○○★→有
  10. 個  性 弱←○○○○○★○○○→強




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