パイプスモーキングの醍醐味は様々な個性のtobaccoの味わいが楽しめることです。
あまりに種類が多く、味わいや特徴が忘却の彼方に消えてしまったものも多々あり
自分の備忘録のためにテイスティングノートをつけ始めました。

パイプ葉は個人の嗜好性や飲み物、時間帯、体調、パイプによってもかなり変わります。
なるべく主観に流れないように書くよう注意は払っているつもりですが、あくまでも参考程度にされてください。お役に立てれば幸いです。
ついでにシガーやRYO、ウイスキーについても少し触れています。

2014年9月16日火曜日

Cornell & Diehl ADAGIO



コーネル&ディール・アダジオ
バーレー種、ラタキア、バージニア、ペリク、トルコ、
無着香
原産国:アメリカ(ノースカロライナ)

行きつけのタバコ屋さんで「ペリクを強めに感じられるの、何かないですか」と尋ねたら、棚の奥からこれを出してきてくれた。「ただしバランスはあまり良くないですよ」。

見ると「Morganton NC」の表記。アメリカ製と知って一旦はスルーしかけた。なぜなら過去、アメリカ製のパイプ葉と言えば工業製品でありチューインガム風の着香物か添加物だらけのイメージしかなかったからだ。しかし僕のそのイメージは1980年代のもの。

コーネル&ディールは創業はなんと1990年。それまでのアメリカタバコの常識を破るピュアでこだわりを持ったtobaccoを提供してくれる新しいブランドだそうだ。20世紀末以来、アメリカではこうした小規模のファクトリーが次々と生まれている。コーネル&ディールはその元祖的存在。

ノースカロライナ州はアメリカ東部(いわゆる南部に属する)、古くからタバコの生産地として北隣りのバージニア州と共に歩んできた。その内陸部の町のモーガントンという町のファクトリー、コーネル&ディールのライナップはtobaccoreviews.comによれば100種類を超えている。日本で正規販売されるのは10種類。



パッケージはブッシュ&プルのアルミ缶。開けるとラタキアの強い芳香が印象的。
葉様はミクスチュア。やや乾燥気味で、摘むとほろほろとほぐれる。ラタキアの芳香に交じって微かな発酵香。
パッケージには
「Cubed Burley, Latakia, VA flake, Perique and Turkish」とある。
一見、キューブドカットの葉は含まれているようには見えないが、レディラブドな小さなコインカット状の葉がそれだろう。

火を付ける前、付けた瞬間、全てにおいてラタキアの強いアロマと渋み。

火付きはまあまあ。甘さは全くない。煙量は多め。ガツンとキック。直感的にこれは努めてゆっくりと燻らすべきと感じ、ドロウ(吸い)よりブロウ(吹き)に丁寧に意識を集中する。…と奥の方からじんわりとバージニアの甘みが昇ってくるが、肝心のペリクは相変わらず感じ取れない。これは正真正銘ラタキアタバコだ。

「ん?もしかしておじさん、ラタキアとペリクを聞き間違えた?」
カタログを見るとラタキア50%とある。だが確かにペリクもブレンドされているようではある。甘臭い発酵臭にそれを一応は感じることはできる。

アメリカタバコと言えばバーレー種だが、バーレーは素のままでは甘みはなくたいていの場合はケーシング(着香、着味)されているが、これは全くその気配はない。
実際、序盤の喫味はとにかくビター。渋くて苦くて辛い。舌荒れとは違う、しびれるようなパンチ&キックの連続。アロマはラタキアとバーレーのややナッツな感じのハーモニーで好感が持てるが、自分の味蕾がどうにかなってしまいそうな不安感にすらかられるほどストロングだ。

火が安定してくると、それが少しずつ変化してくる。とにかくスローバーニングに徹して煙量を少なく心がけていると、やがて日なたの干し草のようなややこっくりしたアロマが周囲を満たし始める。と同時に喫味の方にもコクのある柔らかい酸味が交じる。

主役は相変わらず固めのラタキアとバーレーが幅を利かせているが、確かに奥底でペリクが下支えして、ビターに厚みとコクを与えていることに気づく。
さらにほのかに甘い喫味が表に出てくる。
「うん、ペリクだ。」
ペリクは単体でペリクなのではなく、ブレンド母体のtobaccoを下支えして深くコクのある味わいに変えてることでその存在を知ることができる。

終盤にかかると、本格的にペリクとバージニア(影響を受けたバーレーかもしれない)が主旋律を奏で始め、ラタキアが沈み込む。日なたの松林で、採ってきたきのこや山ぶどうを広げているような遠い記憶が蘇る。チョコレートのようなフレーバーも出てくる。

「なんだこれは!」

形容のし難い不思議なtobaccoだ。序盤と中〜終盤で全く印象が違う。

ブレンドの、無着香のバーレーとラタキアが主体、ペリクにトルコタバコ、申し訳程度にバージニアという構成は、字面だけ並べればまるでハードボイルドである。そもそもラタキアとペリクを一緒にするという発想が僕には初体験であり、ちょっとしたカルチャーショックだった。コーネルディールのラインナップを見ると、ラタキアとペリクのブレンドが思いの外多い事にも気がついた。

しかしこれも有り。
ブレンドが最初から最後まで渾然一体となるのではなく、時系列で主役が代わる。
初めは強烈なラタキア。そこにバーレーの青臭さが絡む。
その強烈さをペリクがさらにクセのある印象に仕立てる。
やがてバージニアとペリクのハーモニー。
最終的に、それら全てがバーレーとトルコタバコに染みこんでストーブされて大団円。

クライマックスは明らかに終盤だ。
深いアロマが感覚を満たし、熟成の進みきったウォッシュタイプのチーズと若くて渋いフルボディのカベルネソーヴィニヨンを合わせたようなアンバランスな渋みと熟成の喫後感で終わる。

一度で何度も美味しい、お得なtobacco。
「ペリクを存分に感じる」という意味ではちょっとベクトルは違うかもしれないが
複雑でビターでキックの中にあるtobaccoの本来の醍醐味、快楽が潜むという意味では
ペリクの存在感は十分だ。
美味いと感じるかそうでないかは人による。紙一重。
僕は「旨い!」と素直に感じた。
ただしパイプ初心者には決して薦められない、ベテラン向けの変態ミクスチュア。

僕自身はまだ到底その域には達してはいないが、散々世界中のタバコを燻らしてきた挙句、一周してしまったようなベテランスモーカーにとっては新鮮な一服を提供してくれるに違いない。

難しいが、その魅力を引き出す価値は十分ある。
アメリカ人がこんなひねくれたtobaccoを作れるとは、感服。

Cornell & Diehl の他のラインナップもぜひ味わいたいと感じたが、国内販売価格が高すぎるのが難点。国内2600円。本国では13ドル前後、ネットを覗くと通販の実売で9ドルを切る場合もある。課税・シッピング・利益加算されたとしても正規ならせいぜい2000円前後に抑えられないだろうか…というのが正直な印象。



時間帯は夕食後〜深夜。個人的には朝、寝ぼけた味覚と嗅覚に喝を入れるのにも重宝している。
火付き、火持ち、舌荒れは標準的。ニコチン酔いの心配はあまりない。
合う飲み物は、ウィスキー、スピリッツ系など。意外にコーヒーも合う。


  1. 生葉芳香 弱←○○○○○○★○○→強
  2. 甘  み 弱←★○○○○○○○○→甘
  3. 味の濃淡 淡←○○○○○○○○★→濃
  4. 熟成感  若←○○○○○○★○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○○★○○○→濃
  6. 満喫感  弱←○○○○○○★○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○○○○★○○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○★○○○○○→良
  9. 常喫可能 無←○○★○○○○○○→有
  10. 個  性 弱←○○○○○○○★○→強

2600円/56.7g=2oz (2014)







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