パイプスモーキングの醍醐味は様々な個性のtobaccoの味わいが楽しめることです。
あまりに種類が多く、味わいや特徴が忘却の彼方に消えてしまったものも多々あり
自分の備忘録のためにテイスティングノートをつけ始めました。

パイプ葉は個人の嗜好性や飲み物、時間帯、体調、パイプによってもかなり変わります。
なるべく主観に流れないように書くよう注意は払っているつもりですが、あくまでも参考程度にされてください。お役に立てれば幸いです。
ついでにシガーやRYO、ウイスキーについても少し触れています。

2014年9月30日火曜日

Bell's ThreeNuns



ベルズ・スリーナンズ
バージニア、ペリク(ケンタッキー)
無着香
原産国:デンマーク(オリジナルはイギリス)スカンジナビアンタバコOEM

ペリクパイプ葉のメジャー代表格のひとつがスリーナンズだ。

これまで何度か「ペリク」の味わいについて書いてきたけれど残念ながら現在、パイプ葉においては本物のペリクにはまずお目にかかれないと言ってもいいと思う。スリーナンズも本家本元のペリクは使用されていない。

ペリクの定義は、厳密には「産地」「品種」「加工法」の3つが狭義で限定された加工葉のことを指す。
産地はルイジアナ州のごく限られた地域、品種はそこでしか栽培できない種類のバーレー種、そして加工法は圧縮された長期嫌気熟成されたたばこの漬物である。この3つの条件を整えない限り、どんなに製法を正確にトレースしても同じ味は再現できないという。
ハバナシガーがハバナ以外の場所で同じ種と栽培法を守っても、どうしてもハバナに及ばないのと同じように、ペリクもまたルイジアナでなければペリクではない。

現在本家本元のペリクはアメリカン・スピリットで独占使用されており、それ以外のTobaccoでペリクと称しているものは、全てケンタッキー州で同じ製法で作られるものを指す。
そしてケンタッキーペリクは本来のペリクとは全く違うと言われる。

となればスリーナンズもまた「ペリク」であるとはなかなか宣言はできない。内外の古参スモーカーのレビュー表現を借りれば、かつてのスリーナンズとは似て非なるものであるとのことだが、僕は残念ながらイギリスで作られていた頃のオリジナルの味は知らないので、現代のデンマーク製スリーナンズでレビューを書くしかないのだが、その範囲で味わいの結論から先に言えば、スリーナンズは紛うことなきペリクのそれを持っているとは言える。

ペリクがアメスピでのみ使用されているとすれば、ペリクの喫味のベンチマークはアメスピ「ペリック」を頼るしかないのだが、そのアメスピ「ペリック」の味わいに近い。

狭義3つの条件を揃えたペリクの100%葉は、酸味、甘み、そして強烈な熟成香を伴うが、クセが強いので単体で使われることはまずあり得ない。アメスピ「ペリック」もまたバージニア主体で、オリジナルのアメスピに少量の「本家ペリク」がブレンドされているのだが、その量は全体の葉色から言ってもおそらくごく少量である。
しかし「アメスピペリック」の味わいは、喫味、アロマ、喫後感のどれをとっても他のtobaccoとは一線を画す深みを持つ。

ペリクは主にバージニアにブレンドされることで真価を発揮するが、その変化は生葉の時ではなく火を付けた瞬間から始まる。
バージニア特有の甘みに奥行きと爽やかさを、アロマに独特の熟成香を、そして喫後感はジンジャーエールやルートビアのような清々とした満足感が加わる。

しかしバージニア単体との違いは実に微妙で、他のブレンドtobaccoのようなわかりやすい熟成香とか喫味のクセとかにはないものだ。ペリクの真価はやはりペリク入りのバージニアを味わうことでしか得られないところがある。

スリーナンズもまた生葉の状態ではそれほど強い個性があるわけではない。
それはバージニアtobaccoであると言っても済んでしまうほどのもので、よく言われるような「酸味」とか「強烈な発酵臭」というような単体ペリクを表現する特徴とはかけ離れており、穏やかだ。

葉様は小さめのコインカット。未熟成のバージニアとケンタッキーペリクが5:1程度の割合で巻かれており、それが輪切りになっている。やや乾燥気味だが湿度は保たれている。
標準的なボウルの場合、このコインを5〜6枚、軽くほぐして詰める。

ほぐし方は軽く形が崩れる程度、詰め方はやや緩めに、火を付けてからタンピングして少し圧縮してやると良い。
火付き、火持ちとも申し分なく、着火と同時に若いバージニアの青臭いアロマが周囲に広がる。

もしもバージニアだけならこの青臭さとぺったりとした甘みが全般を通じて続くだけなのだが、スリーナンズは火が安定した頃からペリク特有の爽やかな甘みと酸味が加わる。
アロマは中盤付近から終盤にかけて熟成された刺激が加わり、程よい陶酔感に包まれ始める。それはまるで若いハバナシガーをやっているような感覚だ。

そろそろ終わりかなと思う頃、高原の空気を胸いっぱいに吸い込んだ時のような清涼感と名残惜しさがやってきて「おかわり」が欲しくなる。

前回のコーネル&ディール・アダジオとの違いは、アダジオが熟成香でいっぱいになるのに比べ、スリーナンズはあくまでも爽やかなキレのある甘みで終わるという点だ。穿った言い方をすれば、やや奥行きに欠ける。
かつてシガレット喫いだった頃に「美味いなあ」としみじみ感じながら喫っていた時のことを思い出すが、パイプ葉としては旨味には若干欠けるかもしれない。
この不足感はペリクの割合が少なすぎるか、ケンタッキーペリクそのものの個性が弱いというところにあるのかもしれない。ただしその分飽きもなく、常喫性も高く普段使いのタバコとしては申し分ない美点を持っていると思う。

舌荒れの心配はない。時間帯は朝〜昼。合う飲み物は水、ビール、紅茶など。

  1. 生葉芳香 弱←○○○★○○○○○→強
  2. 甘  み 弱←○○○○○○★○○→甘
  3. 味の濃淡 淡←○○○○★○○○○→濃
  4. 熟成感  若←○★○○○○○○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○○★○○○→濃
  6. 満喫感  弱←○★○○○○○○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○★○○○○○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○○○★○○→良
  9. 常喫可能 無←○○○○○○○★○→有
  10. 個  性 弱←○○★○○○○○○→強

2000円/50g(2014)


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