スーパーニッカは1962年の発売以来、都合2回のモデルチェンジをしていて、現行は3代目になるそうです。
僕は2代目スーパーニッカ(現在は廃盤)しか飲んだことはありませんし、もうその味もかなり記憶のかなたですので細かい飲み比べをすることはできませんが、わざわざここで飲み比べなどしなくてもスーパーニッカが美味い一流のウイスキーであることは十分に知られていることですから必要ないことでしょう。
スーパーニッカがニッカの最上位商品であったころ、現在の我々が知るところの「余市」の香り、味、余韻というのは、まさにこのスーパーニッカそのものであり、ニッカ…というより日本のウイスキーの最高峰と言って差し支えないものでした。
スモーキーフレーバー、スムーズさ、パンチ、甘みと濃い風味、そしてバニラ香、これが「ニッカの酒」そのものであり「ウイスキーそのもの」でした。
また自分にとってもカティ・サークと共に「ウイスキーというのは美味いものだ」と知ることになった最初の酒です。
スーパーニッカ全盛の時代は1970〜80年代。ジャパニーズ・ウイスキーの代表はサントリーオールドとサントリーリザーブ、そしてこのスーパーニッカが担っていました。
しかしながら、サントリーファンにはやや申し訳ない話になりますが当時はオールドもリザーブもストレートではお世辞にも美味いとは言い難い、なんとも珍妙な味がしたものです。
特にオールドはアルコール臭と共にやってくるべたつく様な甘さといつまでも残る後味は何がどうしてそうなるのか理由は分かりませんでしたが「ウイスキーとはまずいもの、だから水割りにして飲むもの」というイメージに直結していました。
確かに水割りにするといくらでもするすると飲めたものでしたが、ウイスキーというよりはよくできたカクテルのような感じです。
僕が初めてスーパーニッカに出会った時、ウイスキーには独特の言語がありその言語を理解してこそウイスキーならではの美味さというものがあるということに気が付きました。
カティサークでストレートの美味さを知り、スーパーニッカで味わいの複雑さ、奥深さを知りました。
しかし当時の実際の世間のイメージは
リザーブ→高級クラブやバーのキープ用
オールド→バーと寿司屋の定番
スーパーニッカ→通向け洋酒居酒屋で見かける程度
というような扱いになっていました。
そういえば同価格帯にはキリンのロバートブラウンという優れたカナディアン・ウイスキーがありました(これも現在とは全く味が違う)が、こっちはもはやキワモノ扱い。
スーパーニッカの味はそれらのウイスキーの中でも別格でした。
ビシッと決まるスモーキーフレーバー、キレのよい舌触り、自然な甘み、フルーティな鼻に抜ける香り、そしてビターチョコレートのような苦味の後に来るバニラ香。いくら飲んでも飲み飽きない複雑なフレーバーが次から次へとやってきます。
国産シングルモルトウイスキーのない時代には、これほど味わいが深くて濃いウイスキーはなく、あとはオールド・パーやジョニ黒などの高級スコッチを探すしかありません。
この復刻版を口に含む度、ウイスキー原体験だった二代目スーパーニッカの記憶がよみがえってきます。
残念ながら初代と三代目は味わったことがありませんが、こうして復刻版を味わっていると、ビターがやや復刻版の方が強く、またフルーティさが二代目の方がややあったような記憶もあり、しかしそれぐらいの違いしか思い起こせません。そう考えると初代〜二代目にはそれほど味の変化はなかったのかもしれません。
他聞によれば三代目はかなり大きくスモーキーさが失われたとか。
ニッカの他のブレンデッドウイスキーも昔に比べるとずいぶん甘くスムーズに変化してきているので、スーパーニッカについてもその辺の変化は容易に想像できます。
もっとも今のニッカも美味いです。それはやはり時代とともに求められるものも変わり、また我々の味覚も変遷しているのですから当然そうなるのでしょう。
サントリーにしたって昔は不味いなあ嘘っぱちだなあと思って飲んでいたのに、いつのまにか「あれ?意外に美味い」と感じる酒が増えているのですから。
変わったと言われる現行のスーパーニッカもぜひ飲んでみたいと思っています。
ボトルのフォルムもちょうど二代目と同じです。願わくばボトルについても初代の手吹きのボトルを復刻して欲しかったですが、コストの問題でそれは無理な注文というものでしょう。
初号復刻版を、僕は自分自身のウイスキーの素晴らしい原体験である二代目スーパーニッカの思い出として味わっています。
おすすめはトゥワイスアップ(ウイスキー1に対して、常温水を0.5〜1の割合で)。シングルモルトとはまた違う、そして凌駕する素晴らしい芳香と風味が口の中に広がります。
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